尖閣めぐる日中の緊張 米国民にとっては「対岸の火事」との報道も
安倍首相の靖国神社参拝を受けて、ヘーゲル米国防長官が、近隣諸国との関係を改善するよう日本に求めたと報じられている。米国防省のサイトでは4日、「ヘーゲル長官は、日本が近隣諸国との関係を改善し、地域の平和と安定という共通目標を推進する上で協力促進措置を講じることの重要性を強調しました」との声明が掲載された。
ヘーゲル長官は、政府が沖縄・米軍普天間基地移設のための埋め立て許可を沖縄県知事から取り付けたことは評価しているが、参拝は中韓との「ただでさえ緊張した関係を悪化させるだけ」であり失望だ、との立場である。
【参拝に疑問を挙げる国内外の声】
小野寺防衛相はヘーゲル長官に対し、首相の参拝意図は日本が決して再び戦争をしない誓いのためだと釈明した、と報じられている。首相も参拝時、就任1周年にあたり、1年間してきたことの報告のために参拝したと語ったことが、すでに報じられている。
しかしオーストラリア・ネットワーク・ニュースは、その後元日に新藤総務相が参拝したことを指摘している。またAFP通信は、先週の世論調査で回答者の69.8%が参拝の影響に注意を払うべきだと述べ、47.1%は参拝を良くないと述べたと報じている。
一方、参拝および首相の支持派は、「倒れた兵士らが値する常識的な敬意を示した、大きな勝利」「外国政府は日本の国内問題について何の関係もない」などと述べていると報じられている。
【日中戦争になっても米国の一般市民は無関心】
ナショナル・インタレスト誌は、米ネイバル・ウォー大学教授(戦略論)の寄稿を掲載。同氏は、クラウゼヴィッツ戦略理論やSF巨匠ロバート・A・ハインラインの表現などを用いて、西洋人から見れば大した重要性は無さそうに見える尖閣諸島であっても、それを巡って日中が総力戦に突入する可能性さえあると警告している。
それによれば、日中両国の領土と周辺安全と威信を賭けた対立は日清戦争ですでに始まっており、戦後1895年の下関条約で台湾が割譲されるなどしたことは、その後の両国の外交方針の出発点となっている。米国は太平洋戦争後、自らの主導で作り上げた秩序を維持することには関心があるが、一般市民にとっては「対岸の火事」であり、戦いが長引いてデメリットが増せば、腰が引ける傾向もあった。従って、最初は日本に味方したとしても、厳しい戦局が続き、日米間の必死度の温度差が表面化すれば、日米同盟を解消して脱出を図る可能性があるという。