「平和主義から遠ざかる」 日本初の国家安全保障戦略、海外の懸念とは

 外交と防衛の指針を一本化した初の国家安全保障戦略と、新たな防衛計画の大綱草案が、有識者会議で了承され、来週にも閣議承認される見通しとなった。

 国家安全保障戦略策定の背景には、尖閣諸島領海への侵入を繰り返し、一方的に“防空識別圏”を設定する中国や、核開発計画を続ける北朝鮮などがあげられている。

 また、アメリカのプレゼンスの低下や、中国の急速かつ不透明な軍事力強化により、地域のパワーバランスが変化し、安全保障が一層厳しさを増している中で、国家安全保障戦略を軸により明確かつ強固な防衛体制を目指すとされている。

 安倍首相は、自衛隊は依然として国の防衛的手段でなければならないと強調した上で、国家安全保障戦略と新たな防衛計画の大綱は、今後の安全保障のありようを決定する「歴史的な文書」になると語った。「我が国に脅威が及ぶことを事前に防止をし、脅威が及ぶ場合にはこれを排除することを明確し、将来にわたって自衛隊が求められる役割を十分に発揮できるよう必要な防衛態勢を強化していく」と述べている。

【 46年続いている武器輸出三原則撤廃か 】
 大綱草案では、武器輸出三原則等の在り方について「検討」する必要がある、としている。

 日本政府は、企業が武器を輸出したり、海外企業と武器を共同開発したりすることを最近まで禁じていたが、米国との対弾道弾ミサイルシステムなど例外的な扱いが増加している、とフィナンシャル・タイムズ紙が指摘している。

 これまでの歴代内閣は、1967年に確立した武器輸出三原則を正式に覆すことができなかった。安倍首相が武器輸出三原則を撤廃するには、与党の反対派を説得する必要がある、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

【平和主義から遠ざかるのではとの懸念も 】
 これまで、安倍政権による軍事予算増額・軍事力の強化に対して、多くの国民は受け入れてきたが、憲法9条の改正に向けた動きや特定秘密保護法などは、“度を越している”のではとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘している。

 同紙は、安倍首相の取り組みの一環は、戦後日本が歩んできた平和主義から遠ざかるものでは、と懸念している。

【 中国の反応 】
 中国外交部の洪磊副報道局長は、「中国の正常な空、海洋活動に対して、非難される筋合いはない、“中国脅威”を煽り、よこしまな政治的意図がある」と日本を非難。中国は日本の国家安全保障戦略とそれに関係する政策動向に細心の注意を払う、と国営新華社通信が報じている。

 同様に、中国外交部の秦鋼報道官は「日本がどうしても中国の相手になるのなら、日本に未来はないであろう」、と述べている。

Text by NewSphere 編集部