中国への懸念、米国の圧力… 秘密保護法成立を急ぐのはなぜか?海外紙分析
特定秘密保護法案は5日、参議院の特別委員会で可決された。与党は6日の参院本会議で可決、成立させる方針と報じられている。安倍晋三首相は、外交・安全保障の要である国家安全保障会議(日本版NSC)を適切に機能させるためにも、秘密保護法が必要だと主張している。
同法案は、防衛、外交、テロ対策、諜報活動に関する国家機密を保護するため、閣僚らが指定した特定秘密について、漏洩した公務員への罰則を強化する内容だ(最高懲役10年)。ただ、秘密指定の仕組みが不明確と批判されている。安倍首相は、政府が今後、秘密とされる情報の定義をより明確にするだろうとし、情報保全に関する第三者機関を設置するとしている。
これに対し民主党の海江田万里代表は、「必要なのは適切な監視機能を有した第三者機関だ。建前だけの組織は必要ない」とし、「法案は情報を隠蔽したい官僚によって作られた、官僚のためのものであることがいまや明白だ」と法案に反対した。
一方、自民党幹事長の石破茂氏は先週、自身のブログで法案成立に反対するデモはテロ行為にあたると発言し、強い非難を受けた。同氏は後日、発言を撤回し謝罪している。
【なぜ法案成立を急ぐのか】
英ガーディアン紙は、政府が法案成立を急ぐ理由について、国家機密保護の強化に関する、アメリカからの圧力が背景にある、と報じている。
また、アジア地域での緊張が高まっていることも要因だと同紙は指摘している。中国との緊張の高まりや北朝鮮の核開発に対応するため、国の防衛を強化するという安倍首相の保守政策の一環だという。安倍首相は後3年の任期中に、憲法改正により自衛隊の役割を拡大することを含め、国家主義政策を進めようとしているのだ、と推測している。
【各方面から強い反対】
ブルームバーグは、ジャーナリストをはじめ、弁護士、政治家、学者、科学者、映画監督、漫画家などから多くの反対の声があがっている、と伝えている。表現の自由の制限や、内部告発を妨げるのではという懸念が広がっているためだと報じている。中国国営新華社通信も、宮崎駿氏や高畑勲氏が3日、「特定秘密保護法案に反対する映画人の会」を結成したことを報じている。
国連の人権保護機関のトップである、ピレイ人権高等弁務官も、「何よりもまず情報収集行為の適切な保護と、国際的人権法と日本国憲法が保証している表現の自由を保証することなく、性急な法案成立を図るべきではない」と懸念を表明した。
なお、ジャーナリストによる非政府組織「国境なき記者団」による調査では、報道の自由度を示す国別ランクで、日本は2012年に比べ2013年は順位を31も下げ、179ヵ国中、53位となっていた。
また朝日新聞の調査によると、安倍政権への支持率は11月から4%下がり49%と、初めて50%を割った。