“非常識”中国、尖閣含めた防空識別圏を設定 海外メディアはねらいを分析
中国国防省は23日、沖縄県尖閣諸島の上空を含む東シナ海の広範囲に防空識別圏(ADIZ)を設定したと発表。自国のADIZに重なる形になった日本、韓国、台湾と、米国は強い懸念を表明した。
一方中国国防省は25日、日米両政府の抗議や懸念に対し、「既に防空識別圏を設定した日本がとやかく言う権利はない」などと反発を示した。
【非常識な防空識別圏の設定】
ADIZとは、領空(領土から約22キロ)の外側に、各国が独自の基準で設けているもの。侵入機が領空に入ってくる前に識別、要撃する必要があるため設けられている。各国は領土の外側400~500kmの範囲を設定しているという。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、中国が設定したADIZ(尖閣諸島を含む)を飛行する航空機は、中国外務省か航空当局に飛行計画を事前通報する必要があり、通報がない国籍不明機には防衛手段として緊急措置をとる、とされている。
実効支配が及ばない尖閣諸島周辺にADIZを設けたのは、国際的な常識を逸脱した行為であり、日本への圧力をさらに強める姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。
【中国のADIZ設定に各国の反応は】
中国の一方的な発表に、ヘーゲル米国防長官は、中国の行為は現状の国境線を変更し、地域を不安定化させる試みである、と見解を示した。もし日本が攻撃されたら日米安全保障条約に基づき日本を守る義務がある、と改めて明言し、中国をけん制した。
日本政府は、中国のADIZ設定に「全く受け入れられない」として、外交ルートを通じて中国に抗議した。ただし抗議は首相や外相などのトップ級ではなく局長レベルで伝えられたという。当局者によると「日本側から緊張をエスカレートさせない」という姿勢のためだ。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、日米両国は、中国の新たなADIZ設定域内で中国側に通報しなかった場合、同国が真剣に対処するのかどうか、中国国内の国粋主義者の感情を和らげる「政治的ジェスチャー」なのかを判断しようとしているという。
一方、韓国は、自国の飛行機が中国のADIZ重複空域を通過しても通報しない方針だと報じられている。
一部のアナリストは、いずれ中国は、フィリピンやベトナムなどと領土問題になっている南シナ海にもADIZを設定するであろうと予想している。
【国家安全委員会設立との関係】
米高官によると、中国の動きは突然のものであり、イランとの暫定合意に注力していたため意表をつかれたようだ。
他方、「国家安全委員会」(中国版NSC)の設立と関連する可能性が高いと指摘されている。北京で今月12日に閉幕した中国共産党の第18期中央委員会第3回全大会会議(3中全会)で、強国と軍事力強化の観点から「国家安全委員会」の設立が決まっていた。トップには習近平国家主席が就任する予定であり、習主席の権力を国内外に見せつけるねらいもありそうだ。