韓国へのライバル意識も? 日本政府、「クールジャパン・ファンド」主導の背景とは
日本食、ファッション、アニメなど「日本文化」の海外展開を支援する官民ファンド、「クールジャパンファンド(海外需要開拓支援機構)」が25日に始動する。出資額は、政府から300億円、ANAや電通など15企業から75億円の合計375億円で、来年3月までに600億円、2015年3月には900億円に拡大される見込み。
460兆円とされるコンテンツ事業のグローバル市場規模に対し、日本の市場シェアは0.5%しかないという。政府は「刺身やアニメ」を海外に売り込んでいけるのか。
【日本政府が変わったのは、「クール・ジャパン」の評価と韓国への対抗心から】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、従来、アニメ、漫画、コスプレといったものをビジネスとは考えていなかった日本政府が見方を変えたのは、2002年米フォーリン・ポリシー誌のエッセイ「Japan’s Gross National Cool(日本の国民総かっこよさ)」であった。ここでは日本のポップ音楽、ファッション、アニメ、料理などの国際的な文化影響力が急成長していると論じられていた。
また、日本の「隣人かつライバル」である韓国が、10年以上、国を挙げてKポップなどの国際展開に取り組んできたことも、ファンド始動の背景にあるようだ。韓国は、「韓国デザイン振興研究所」や「国家ブランディングに関する大統領評議会」といった取り組みに何億ドルも費やしてきたという。
【ポテンシャルを秘めた地場産業】
ファンドを監督する経済産業省クリエイティブ産業課の伊吹英明課長は、有望な製品を抱えるもののグローバル市場に参入する資金と経験を欠いた、多くの中小企業を支援する意図を同紙に語っている。人口減少と市場の飽和から、企業が生き残るためには海外での成長を模索する必要が生じてきたことが背景にある。
また、「イッセイミヤケ」ブランドなどの実績がある同ファンドの太田伸之CEOは、ロイターのインタビューに対し、国が支援する意義について、出資側の短期的な儲けだけに囚われず、企業を長期的に育てて行ける点を強調した。各商品が個別に展開するより、「文化」として一体的に勝負する利点も主張している。
太田CEOは「地場メーカーは縮小しており、多くの若者が大都市に向けて去って行きます。古い世代が死ねば、跡を継ぐ者はいません。100年後の日本はどうなるのだろうと思います」などと決意を述べている。
【官僚に商売がわかるのか? ファンドの懸念点】
しかし海外メディアは、官民ファンドとはいえ実質的に政府頼みのファンドであり、それによる公正競争への悪影響、政府によると年間7%~9%のリターン期待値だという収益性の弱さ、政府が成功する企業を見分ける目、といった懸念点があると指摘する。
また日経新聞でも、企業側が単なる補助金と捉えている可能性や、赤字を税金で補填する結果についての懸念が指摘されている。