「安倍首相はぶれないだろう」との声も 小泉元首相の脱原発発言を海外はどう評価したか?
小泉純一郎元首相は12日、日本記者クラブで、原子力発電を直ちに中止するよう政府に求めた。同氏は、安全性の問題から操業を停止している原発の再稼働はやめ、代替エネルギーが十分に確保されるまでの間に合せとしても利用すべきではない、と主張した。「原発ゼロは、最良の選択だ。企業も国民も心構えは出来ている」「安倍首相が脱原発の方針を決定しさえすれば、それを実現できるだろう」と、現首相に決断を迫った。
【原発推進の安倍首相】
12日の記者クラブでの小泉氏の発言は、これまでで最も公に、原発反対を訴える機会となった。
これに対し安倍晋三首相は、同氏の発言を無責任だと反論し、「政権を与る者として、国民の生活と経済に支障をきたさないようにエネルギー政策をすすめることが、私の仕事だ」と述べた。
フィナンシャル・タイムズ紙は、2011年の東北震災以前の国内電力の30%は、原子力発電によるものだった、と報じている。現在それを補うため、天然ガスやそのほかの燃料をより多く輸入し、電気代が上がり、二酸化炭素の排出量は増加し、貿易赤字は増大している、と同紙は指摘している。
なお、十数基の原発は、2014年の春には国が定めた機関の検査に合格の後、再稼働が決定される予定だ。
【小泉発言の現政権への影響】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、小泉氏が政界に復帰する意思はないと繰り返し発言していることを取り上げ、その影響力を疑問視している。
「安倍首相にとって、エネルギーの確保は、国の安全保障と防衛に関わる問題」で、小泉氏の発言でその方針がぶれることはないだろう、と首相の強硬な外交姿勢からの専門家の分析を同紙が取り上げている。
また「安倍首相は、エネルギー問題を経済問題にすり替えることに成功している」「小泉氏の発言で最も影響を受けるのは、国会野党ではなく与党で、自民党内部だけで原発をどうするのかという議論が再燃することになるだろう」という、そのほかの専門家の見方も報じている。
ブルームバーグのコラムニストであるウィリアム・ペセク氏は、小泉氏の“国民を味方に付け、改革を断行する”戦術を、安倍首相は学ぶべきと指摘した。同氏は、小泉氏の発言は、安倍首相に対抗するものではなく、「真の改革者として殿堂入りする機会を提供している」ものだと評価している。
【原発反対意見と相反する選挙結果】
2011年3月の原発事故以降、世論調査では原発反対の意見が強いにもかかわらず、地方選挙、総選挙、どちらも、多くの自民党議員や原発推進派の候補が当選するという結果になっている。
NHKが11月8~10日に行った世論調査では、44%が政府の再稼働の方針に反対。19%は支持。33%はどちらとも言えない、と答えている。また、安倍首相は経済優先の政策が評価され、60%前後の支持率を維持している。同首相は、日本のインフラ技術を新興国に売り込むとし、原発を海外に輸出する政策をすすめている。