中韓・米国に配慮か? 安倍首相が靖国参拝を見送った理由とは=米紙
安倍晋三首相は17日、秋季例大祭に合わせた靖国神社への参拝見送りを決めた。参拝の見送りは、春季例大祭、終戦記念日に続き、今年に入って3度目だ。神社によると、それに代わり、「真榊(まさかき)」という供物を、内閣総理大臣名で、私費で奉納したようだ。前日に納められた真榊料は5万円だという。
田村憲久厚生労働大臣も同様に真榊を奉納した。
加藤勝信内閣官房副長官は17日、靖国神社参拝に関して、国のために亡くなった人々に尊敬を示すのは自然なことだとし、「しかし、首相と厚労省大臣の個人的な行動に特に言及する考えはない。」と述べた。
一方、新藤義孝総務相は18日、靖国神社に参拝した。超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長=尾辻秀久元厚生労働相)に所属する、衆参157議員も参拝した。
【隣国と国内支持者、双方に配慮か】
安倍首相は2012年12月の就任前、2006~20007年の前回在任期間中に靖国神社参拝をしなかったことが悔やまれると発言し、再び首相になった暁には、靖国神社に必ず参拝をする、と公言していた。
しかし、安倍政権が右寄りの外交方針をすすめていると懸念する、隣国との真っ向からの衝突を避けようと、参拝を見送った、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
ただ、2006年から、首相による参拝はないが、閣僚による参拝は時折行われてきた。その度に韓国・中国から強い非難を受けている。
安倍首相は国を代表する者として、アジア諸国の感情を逆撫でしないように、発言や行動を注意深く選択している、とニューヨーク・タイムズ紙は報じている。同紙は、同首相が第2次世界大戦では侵略行為はなかったと強く信じているとの見方から、危険な歴史修正主義者だとレッテルを貼られないように慎重なのだとみている。
安倍首相の注意深い行動は、尖閣諸島の問題で緊張が高まっている中国との関係をこれ以上悪化させないようにという、米国からの圧力によるものだ、とも指摘している。
同紙はまた、安倍首相は参拝を見送る一方、首相名・私費で「真榊」を奉納することで、公式な奉納という態度を曖昧にし、靖国参拝を肯定する支持者たちをなだめようと苦心しているのだ、とも報じている。
【中国・韓国は”遺憾の意”を表明】
中国の新華社通信は、靖国神社について、A級戦犯を含む戦没者を祀る神社であり、日本の過去の軍国主義の象徴とみられている、と説明している。
中国の華春瑩外交部報道官は17日、中国は繰り返し靖国神社についての見解を発言してきた、とこれまでの姿勢に変わりはないことをあらためて強調した。報道官は、「中国は、日本政府が侵略の歴史を認識し、真の自己反省を行い、中国を含むアジア諸国の犠牲者の感情に配慮して、関連する問題に適切に対応するよう求める。」と述べた。
韓国の外務省報道官も、今回の奉納に関して「強い懸念と遺憾の意」を表明した。