安倍政権の改革姿勢は見せかけか? 海外紙、首相演説に厳しい評価
第185臨時国会が15日に召集された。会期は12月6日までの53日間となる。安倍首相は所信表明演説を行い、「成長戦略の『実行』が問われる国会」と述べた。
海外各紙は、今期国会が、企業の規制緩和と競争力強化で経済成長に弾みをつけようという安倍政権にとって、政策実行のための最も重要で困難な局面だとみているようだ。
安倍首相は、演説の中で、「今後3年間を「集中投資促進期間」と位置付け、税制・予算・金融・規制制度改革といったあらゆる施策を総動員してまいります」と誓った。
【経済成長に必要なのは?】
日本は今年4月から6月、前年同期比3.8%の成長を記録した。これは先進国で最も高い経済成長率だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。しかし専門家は、さらなる構造改革なしには、このまま成長を維持することは難しいだろうと推測している。
これについて、安倍首相は演説で、最先端の再生医療技術分野の成長を促進する一方、法律により手厚く保護されている、電力業界や農業などを改革の対象に挙げている。ただ、実際それらをどのように実行するのかはっきりしていない、と同紙は指摘している。
さらに、日本に進出を希望する海外企業が長年望んできた、法人税減税と雇用の規制緩和については、演説に含まれなかった。
【外交・安全保障について】
安倍首相は、官邸に国家安全保障会議を設置し、外交と安全保障政策の司令塔機能を強化すると発表した。
また自民党は、特定秘密保護法法案の通過を目指している。専門家は、これに関して、憲法の保証する知る権利と報道の自由を侵害する恐れがあり、現在でさえ非難の声がある公的情報の取得に、より制限をかけることになる可能性がある、と指摘している。
さらに、AP通信は、憲法9条の解釈変更により集団的自衛権の行使を認めようとする動きもあると報じている。安倍首相は、「戦後68年にわたる平和国家としての歩みに、私たちは胸を張るべきです。しかし、その平和を将来も守り抜いていくために、私たちは、今、行動を起こさねばなりません」と述べている。
【見せかけの改革か】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、安倍首相の演説内容について、「彼の約束をあてにしてはいけない」と、厳しい姿勢を示している。改革は見せかけに過ぎず、安倍政権の本来の目的は、中国や韓国との政治的経済的競争に勝利することだという。改革の手を緩めることで、競争に勝つための成長が促進されるようなら、ためらうことはないだろう、と報じている。
また同紙は、安倍首相が演説で発表した、特異な規制や制度を徹底的に取り除き、国家戦略特区制度を創設するという計画に懐疑的だ。
雇用市場の改革についても、日本が競争力のある市場にどうやって戦力を供給するのか、雇用者のセーフティーネットは保証できるのか、と課題を指摘。94ページにも及ぶ成長戦略の資料からは、雇用システムの根本的な問題に取り組むより、既存の企業にいい顔をすることが大事なのではと、改革実行に疑問を呈している。