TPP交渉、日本は「聖域」を縮小できるのか? 各国から期待の声

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせてインドネシア・バリ島で行われている、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の閣僚会議が6日、閉幕した。年内妥協を目指す関税交渉のほか、知的財産権や環境などで妥協点を探ったが、合意には至らなかった。各国は8日の首脳会合で、大筋で合意できるか調整を続ける。

 甘利TPP担当相は、交渉は前進したとの認識を示したものの、年内に再び閣僚会合を開く方向を明らかにした。

 自民党の西川TPP対策委員長は、日本は農業品目の関税削減を検討すべきとの考えを述べ、国内の農業従事者の反感を買った。

 日本政府はこれを否定したものの、コメ、麦などの重要農産品5分野のうち、飼料用や加工品など一部の品目の関税を撤廃・削減する方針を固めた。

 海外各紙は、TPP交渉進展に向けた、日本政府の前向きな姿勢に注目した。

【日本の決断に注目】
 TPP交渉を収束させるには、各国の厳しい政治的決断が必要となる。どの国もその決断に至っていない中、日本に期待が向けられている。

 参加者からは、「21世紀型協定」に向けての心強い兆しとの見方がある一方、安倍政権は国内改革のためにTPP交渉を利用しているとの懸念の声もある。甘利大臣は、TPPについて、アベノミクスの第4の矢の一環だと述べた。

「日本の大胆な決断には強い意味がある」と、ニュージーランドのグローサー貿易相はフィナンシャル・タイムズ紙に語ったという。

 同紙はまた、安倍政権が「聖域5分野」をどの程度守れるかはわからないとし、解決策の1つとして、長年かけて徐々にこの敏感な分野を開いていくことを提案した。

【オバマ氏不在について】
 米国では政府機関の一部閉鎖のため、オバマ大統領がAPECを欠席。代理としてケリー国務長官が出席している。

 TPP交渉参加者らは、オバマ大統領の欠席が関税交渉の年内妥協を妨げることはないと主張しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。ただ、マレーシアのナジブ首相は、年内妥協は困難との考えを示した。

 一方、開催地であるインドネシアはTPP交渉に参加していない。同国のバスリ財務相は「中国は東南アジアにとって非常に重要」との考えを示した。中国も参加しておらず、アジアだけの「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」を推進している。

 これらの米国への敵意は驚きではないという。タイム誌は「自由貿易と投資の促進はオバマ政権のアジア太平洋戦略で最も弱い柱だった」との専門家の見解を掲載した。

【財界の期待】
 TPP交渉が難航する中、財界からは期待の声が上がっている。

 経団連の米倉弘昌会長はTPPについて、2020年までに自由貿易圏を構築するというAPECが掲げる目標に向けての「黄金の経路」だと語ったとタイム誌は報じた。同氏は代表団に対し、より開かれたビジネス環境の必要性について述べたという。

Text by NewSphere 編集部