見せかけの賃上げ? 中国メディア、アベノミクスに疑問
金融緩和、公共事業、成長戦略の「3本の矢」からなり、デフレ脱却と経済成長を目指すアベノミクス。これに対する中国メディアの報道は、厳しい姿勢のものが目立つ。
【行き渡らない賃上げ】
2013年度の地域別最低賃金を決める地方審議会の答申がほぼ出揃い、新しい最低賃金の全国平均額は、前年度比15円増の764円となることが分かった。賃金底上げによるデフレ脱却を目指す、安倍政権の意向が強く反映された形だ。
また、アベノミクスへの期待から円安・株高が進み、輸出産業などで業績改善に向かった企業が増えたが、激しい国際競争にさらされている企業を中心に、年収の引き上げは「ボーナスで行う企業が多い」ため、目立った形での賃上げにはつながらなかったことも指摘されている。一時金増額など、一部大手企業の「見せかけの賃上げ」だとの批判もある。
【日本は9月に食品の値上がりを迎えることも予想】
一方、円安による輸入原材料価格の上昇を背景に、食品メーカーなどで値上げの動きが相次いでいる。一般財団法人ひろぎん経済研究所が、7月中に広島銀行の支店に訪れた既婚女性1219人を対象に実施した個人消費動向調査によると、アベノミクスの影響で家計が「苦しくなった」と答えた人が17.6%に対し、「楽になった」と答えた人はわずか2.0%だった。ガソリンや食料品の値上がりをマイナス要因にあげる声が目立つ。
物価の伸びに合わせて賃金も上がらなければ、家計の購買力は下がり、消費を下押しする恐れがある。デフレ脱却は再び遠のくことになる。
【これからの課題】
ニュースサイト「中国新聞」では、安倍政権が、中国との経済協力に悪影響を与える可能性もあると指摘している。日中関係の悪化を背景にしてか、「ギャンブラー的な経済政策」、「アベノミクスは債権国に対し無責任だ」という厳しい意見もある(上海の東方早報など)。
また「华讯财经」の記事に対する書き込みでは、「デフレからの脱出や経済成長を実現できなかった時、アベノミクスは多額の借金だけを残すことになりかねない」と警告する人も目立っていた。