なぜ今、政府が汚染水対策に介入したのか?
政府は7日、東京電力が行っている福島第1原子力発電所の汚染水流出対策に、直接介入する姿勢を示した。
東京電力は昨年、政府の資本注入により事実上国有化されたが、事故復旧にあたり政府が直接、予算を拠出することはなく、政府から東京電力に渡された資金も融資の形を取っていた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこれを、「過去2年間の大部分、手の届く距離を保とうとした、日本政府のシフト」と評している。
【後手に回り続けた東電】
ニューヨーク・タイムズ紙は、主にこれまでの経緯に焦点を当てて報じている。
福島第1原発ではすでに、2011年にメルトダウンが発生した3原子炉の建屋からの汚染水を回収する努力が続けられていた。
東京電力は、背後の山地から流れてくる地下水については、地下深くを通るため問題ないと述べていたが、同社は5月22日、施設下の地下水から、安全基準の約10倍の放射性三重水素を検出したと報告した。同社は、汚染水がおそらく海に流出していると認識しつつも、その流出量を把握してはいなかった。
汚染水は、昨年12月以降のある時点で流れ始めたと考えられている。
ただ、専門家によれば、海へ流出した汚染水は、充分安全に希釈されうるレベルである。三重水素自体も比較的毒性が低いと考えられている。
しかし汚染水には他に、放射性のストロンチウムやセシウムも含まれていた。現在、流出ペースは1日300~400トンと推定されているが、総量は不明である。汚染源についても、施設地下の高濃度汚染水配管の可能性が高いとされるものの、正確には特定されていない。
同社は6月、施設と海の間の土中に水ガラスを注入して防壁とした。しかし、せき止められて蓄積する汚染水は、最終的に防壁を越えて流出しただけであった。それどころか、地下水位が上がり続ければ、汚染水が地表に達したり、回収・貯蔵されている高濃度汚染水に接触する恐れも生じる。
各紙は、同社の対応が場当たり的なものに終始してきたことや、情報を早期に開示しない姿勢が、批判を集めていると報じる。原子力規制庁の金城慎司・対策室長は、「東電は、この危機が緊急であるという十分な感覚を欠いています」と述べた。
【東電任せでは難しい「凍土作戦」】
現在検討されている対策は、1日あたり100トン程度の水の汲み出しのほか、化学薬品を用いて地盤を凍結させることであるが、少なくとも400億円を要するとみられ、実績もない。
ここへ至って政府は、東京電力独力では対応困難と判断し、介入を決断したと報じられている。
菅官房長官は、「この規模の遮蔽壁の構築は、かつて行われたことがありません」「これを成し遂げるには、国が一歩前進し、手を貸す必要があります」と述べた。安倍首相も、汚染源特定作業の強化および拡散防止措置を、東京電力のほか規制当局および担当大臣に要請したと明らかにし、「東京電力に任せるだけではいけません。政府が対策を考え出す必要があります」と述べた。経済省の新川達也・原発事故収束対応室長は、対策が2015年7月までに完了されるべきだと述べている。