海外紙「日本人の半数は原発反対なのに、なんで自民党が勝つの?」

 原発の安全性を判断するための新規制基準が、8日に施行された。これを受け、日本の電力会社4社は、5原発10基について、再稼働に必要な安全審査を申請した。北海道電力は泊原発1~3号機(北海道)、関西電力は大飯原発3、4号機(福井県)と高浜原発3、4号機(同)、四国電力は伊方原発3号機(愛媛県)、九州電力は川内原発1、2号機(鹿児島県)について、それぞれ申請書を提出した。
 なお、震災の賠償に喘ぐ東京電力は含まれていない。東電は、柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働の意向を表明していたが、県知事の強い非難を浴び、8日の申請には至らなかった。
 海外紙は、背景と今後の見通しについて報じている。

【新規制基準を満たせるのか?】
 2011年の東日本大震災に伴う福島第一原発の事故を受け、国内50基の原子炉のうち、48基は稼働していない。
 事故を受けて定められた新規制基準には、地震や津波対策の強化、テロ対策として「緊急時制御室」の設置、フィルター付きベント(排気)装置の設置が盛り込まれている。
 今回申請された原子炉は、福島第1原発の沸騰水型より強度が高いといわれる、「加圧水型」と呼ばれるタイプ。大規模な設備改修が必要になるフィルター付きベント(排気)設備の設置が、5年間猶予されている。ほとんどの原子炉は、ベント設備も緊急時制御室もまだ準備されていないとガーディアン紙は指摘している。

【世論と選挙情勢にギャップ?】
 安倍政権は発足以来、原発の再稼働を押し進めてきた。背景には、原発の代わりに火力発電を稼働させるため、燃料輸入が拡大し、貿易赤字を圧迫していることがある。電力業界にとっては、2012年度は1.59兆円の損失だったとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘した。
 今回の原発再稼働要請は、7月21日の参院選の選挙期間中に行われた。同紙は、5月と6月に行われた世論調査では、過半数が原発に反対しているものの、原発再稼働を進める自民党は圧勝する見込みであると報じている。

【安全性とコストへの言及】
 原子力規制委の田中委員長が、安全文化を国際的な基準に高めるには「長くかかる」とコメントしたことを、ニューヨーク・タイムズ紙(ロイター転電)は紹介している。
 また同紙は、新規制基準に適合するための改修には、業界全体で120億ドルほど要する、という試算を紹介している。

 全体的に、原子炉再稼働に対する、海外紙の懐疑的な姿勢・懸念が浮き彫りになったといえる。

Text by NewSphere 編集部