戦後初、衆院選「無効」判決 各紙が背景と影響を分析
広島高裁は25日、「1票の格差」が最大2.43倍だった昨年の衆議院選挙を、違憲で無効とする判決を下した。広島高裁は、「最高裁の違憲審査権が軽視されている。もはや憲法上許されるべきではない」と、厳しく国会の対応を批判。背景には、最高裁大法廷が2011年3月、最大格差2.3倍だった2009年の衆院選を「違憲状態」と判断していたことがある。国会は格差是正の義務を負ったのに、区割りなどを改正しなかったため、戦後始めて、国政選挙を「無効」とする判決につながった形だ。
一方判決は、直ちに選挙を無効にすることの弊害を懸念し、政府の審議会が区割りの改定作業を始めてから1年となる11月27日に、判決の効力が生じるという条件をつけた。
日本各紙(朝日・読売・産経)は判決の背景と影響をそれぞれの視点から論じている。
まず、総じて各紙は政治の怠慢を批判し、今回の判決は司法からの“強烈な警告”とみている。
朝日新聞は、憲法違反の体制を“クーデターで樹立された政権”にまでなぞらえ、そんな国でも2年間(最高裁判決から現在までの期間)の違憲状態には焦るはず、と批判している。同紙は、最大の問題として、政治への“信頼”という民主主義の土台がゆらぐと指摘する。急場しのぎに「0増5減」法改正はできても、抜本的な改革は、どの党も党利党略にしばられ合意できていないと糾弾。その裏には「政治家が有権者を選ぶ」という傲慢さが透けて見えると厳しく批判している。さらに、成長が鈍化する日本では、負担の分配が政治の役割になると指摘。そのためにも、政治に対して国民の信頼は不可欠であり、各党・各議員は、より有権者の平等を考慮すべきという論調だ。
産経新聞は、国会に「選挙無効にはなるまい」という甘えがあったのではと批判。今後の判断は最高裁に託されるとはいえ、戦後初の「選挙無効」を、国会は重く受け止め、与野党協議をすみやかに進めるべきとの論調だ。
読売新聞は、今回の判決が、国会の“無作為”な対応を痛烈に批判するものであると紹介。これまで「事情判決」として、選挙無効の判断を控えてきた司法だが、今回は猶予期間を設け、その間に違憲状態が是正されなければ「選挙無効」の効果を発生させるとした。これを受け、「司法が政治を考慮することなく冷徹に判断した画期的な判決だ」という、政治学者のコメントも掲載している。
なお26日には、広島高裁岡山支部も衆院選は「違憲で無効」とする判決、東京高裁は「違憲」とする判決を、それぞれ下した。最高裁大法廷の判決は、年内にも出る見込みと読売新聞は報じている。