中国軍艦、海自護衛艦を“ロックオン” 過熱する中国の挑発を日本紙はどう報じたか?
1月30日、中国軍艦が海上自衛隊の護衛艦に対し、射撃用の火器管制レーダーを照射したことを、小野寺防衛相が5日、明らかにした。1月19日にも海自ヘリコプターに対して同様の行動があったとも発表された。報道によると、尖閣諸島北方の公海上だったという。小野寺防衛相は「大変異常なことで、一歩間違うと大変危険な状況に陥る」と批判した。日本政府は、外務省中国・モンゴル1 課長から在日中国大使館参事官に、北京の日本大使館次席公使が中国外務省アジア局長に、それぞれ抗議を行った。
中国の挑発行為のねらいをどう分析し、日本政府に対してどのような姿勢を求めるのか、という点について日本の各紙は詳しく報じている。
前提として、中国の行為は軍事衝突に発展する危険性があり、許されないという見解で各紙は一致している。さらに、これまでより格段に緊迫度の高い挑発だという指摘もほぼ共通している。ただ、武器使用に準じる行為という指摘もあれば、武力攻撃とまでは言えないという意見もある。
その背景と狙いについて、まず朝日新聞は、在日米軍の動きを指摘した。具体的には、中国機の領空侵犯以降、米軍が空中警戒管制機(AWACS)を尖閣周辺の空域に投入し、クリントン前国務長官が中国を牽制する発言をしたことなどを、 “中国への圧力“だと警戒していたという関係者のコメントを取り上げた。今回の挑発行為は、“尖閣諸島が中国のものであるということを前提にするかのような行動”と同紙は報じている。
読売新聞は、「尖閣問題で日本を話し合いの場に引き出したいと考えている。今回の行為もその一環だろう」という専門家のコメントを掲載した。領空侵犯が自衛隊機の緊急発進を引き出したことも踏まえ、一連の挑発は、自衛隊や米軍の動きを見るためという分析もある。さらに政治的な側面としては、政治家の訪中を受け入れるなど関係改善の期待を持たせた一方での行動から、“尖閣問題では一切譲歩する考えがない”ことを示し、日本の危機感をあおる狙いが伺えるとしている。
産経新聞も、中国が日本の「出方を伺っている」という関係者の分析を掲載するとともに、「臨戦態勢」の強化をちらつかせ、尖閣問題で“安倍政権から譲歩を引き出す”狙いが伺えるとした。領海侵犯を繰り返しても変わらない状況を一変させるため、中国国内で強硬派の意見が採用されるような状況は極めて危険だと論じている。
日本政府の対応について、朝日新聞は、記事中で“日本の立場を国際社会に発信していく姿勢”、“冷静な対応ぶりも演出”などと報じた。また社説では、過激化する中国に対して“自制を強く求める”とし、日中政府には“危機回避のためのチャンネルづくり”を求めるにとどめた。
読売新聞の社説では、“日本は冷静に対応する必要がある”と述べるとともに、具体的な対策として、尖閣の警戒・監視専従部隊の新設など、海上保安庁の体制強化を求めた。さらに米国との連携の必要性にも言及している。また日本の抗議が課長レベルだったことを指摘したものの、背景として、党指導部の意向か見極めたうえで政府は抗議のレベルをあげることを検討していると報じた。
一方産経新聞の社説は、“中国側を抑止するあらゆる措置を検討”し、“自衛隊や海上保安庁による警戒監視活動強化と併せ、不測の事態への備えを怠ってはならない”と強く主張している。中国とは対照的に冷静な対処は、国際世論を味方につけることにつながると評価するものの、警告射撃など不法行為への対抗措置強化が必要なことを示唆した。
(追記)
読売新聞は2月7日の社説でこの問題を論じた。
レーダー照射 中国軍は危険な挑発を慎め(2月7日付・読売社説)
中国に対しては自制を、日本に対しては米国や東南アジア各国との連携と、冷静に対応を求める姿勢である。