積極財政?ばらまき? 予算案の重要ポイントを各紙が分析
政府は29日、2013年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は92.6兆円と過去最大の規模となる。 歳入は、税収43.1兆円(前年比1.8%増)、新規国債発行42.9兆円(3.1%減)。歳出は、社会保障費29.1兆円(5.1%増)、公共事業費5.3兆円(15.6%増)、防衛費4.7兆円(0.8%増)、国債費22.2兆円(1.4%増)となっている。また、震災復興対策jは4.4兆円を別に計上した。政府は、2月下旬に予算案を国会に提出する予定だ。
国家運営の肝となる予算案の重要なポイントを、各紙はそれぞれの視点から分析した。
朝日新聞は、1面で「人からコンクリートへ」と題し、生活保護を切り下げ公共事業を大幅に増加した予算案を、批判的に取り上げている。生活保護費は2.8兆円と12年度よりわずかに増えるが、給付水準引き下げなどで670億円削減されたことを報じた。一方公共事業費は、補正予算と合わせると10兆円規模に拡大したと指摘した。
さらに、「見せかけの財政規律」を演出した点も批判している。13年度予算では、4年ぶりに国債発行額が税収を下回っている。報道によると、安倍首相は、バラマキ批判をかわすためにも、財政規律重視の姿勢を演出することに腐心したという。ただこれが実現したのは、10兆円規模という12年度の補正予算案を組み、本来は本予算で対応する分を前倒ししているためであると指摘した。民主党の細野幹事長は「粉飾に近い」と強く非難しているという。
日銀の物価目標導入・追加緩和(金融緩和)、緊急経済対策(財政出動)、とアベノミクス「3本の矢」の具体策が明らかにされる中、成長戦略についてはまだ曖昧な状況だ。同紙は、予算を見る限り「心もとない」と批判、公共事業中心の景気対策だけに頼らず、「次元の違う」戦略をまとめるべきと示唆した。
読売新聞は、1面で「経済再生へ大型予算」と題し、デフレ脱却を実現し景気下支えを図る積極財政と報じた。全体的には、民主党時代に抑えられた分野へ予算を配分し、「バラマキ批判」をかわすため財政規律へも配慮するなど、安倍首相の意向を強く反映したものと報じている。特に民主党との違いについて詳しく分析した。減額が続いていた公共事業費・防衛費を増額する一方、民主党支持母体の一つである地方公務員の人件費カット(財源を4000億円削減)に成功したことが象徴的だという。
一方、財政規律配慮の姿勢を見せるため国債発行額を税収以下に抑えた点については、現実的かどうか疑問を投げかけている。そもそも税収確保のためには実質2.5%の経済成長率を実現しなければならず、テクニカルな方法で歳出を少なくしている面もあるためだ。
今後の課題としては、成長戦略の実現、年金など社会保障も含めた支出抑制を挙げた。
産経新聞は、1面で「「分配」から「成長」へ」と題し、民主党政権の家計支援重視姿勢から、産業支援を手厚くする姿勢への変化が現れていると報じた。
3面では、家計にどう影響するか、具体的な説明を試みている。ポイントは、公共事業増加から景気回復の可能性、教育費の負担軽減、企業の雇用促進税制、住宅ローン・自動車減税などだ。
また、国家予算を「アベ家の家計」に例えた説明も掲載した。予算案の1兆円を10万円に換算すると、下記のようになるという。年間収入(歳入)は926万円で、アベさんの稼ぎ(税収)は430万円と収入の約半分、足りない分は借金(国債発行)をして賄っている状況だ。支出(歳出)は、ローン返済(国債費)が222万円と出費の24%にのぼり、残りの約700万円で、防犯費(防衛費)、治療費や年金など(社会保障費)を払っていることになる。さらに、これまでの借金総額(国債残高)は7495万円にも達するという。
財政規律の「演出」については、借金頼みの体質から抜けだしたわけではないと厳しい姿勢だ。今後は財政健全化と経済成長の両立が課題になると指摘した。