日本紙が論じるイタリア総選挙の影響とは?
26日、イタリア総選挙の投開票が行われた。下院では、緊縮財政継続姿勢の中道左派連合が僅差で勝利した。一方上院(定数315議席)では、過半数を得る勢力は出なかった。中道左派連合(123議席)と接戦を繰り広げたのは、ベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党(117議席)。さらにコメディアンのペッペ・グリッロ氏が率いる「5つ星運動」(54議席)も躍進した。
イタリアの上下院の権限はほぼ同等のため、日本の「ねじれ国会」以上に政権運営が困難になる。このままでは、次期政府発足に不可欠な首相指名すら滞る可能性が高いという。
この結果を受け、欧州・イタリア株は下落。ユーロが売られたため、ユーロ安・円高が進んだ。またイタリア国債の利回りも上昇(価値は下落)。沈静化していたユーロ危機が再燃する危険性が取り沙汰されている。
こうした中、日本各紙(朝日・読売・産経)は、イタリアの課題や日本に与える影響を分析した。
まず、なぜ緊縮財政を訴える政党連合が敗北したのか。
2011年秋に発足したモンティ氏率いる「実務者内閣」は、増税や年金改革などを通じて財政赤字の削減を図り、国際金融市場から高い評価を受けた。ただ、産経新聞によると、副作用としての経済低迷により、国民は「改革疲れ」していたと分析。こうした状況下でベルルスコーニ元首相は、国民に不評だった住宅税の廃止・還付など「バラマキ」政策を掲げて支持を集めたという。同紙はまた、緊縮財政にはうんざりし、かといって児童買春などスキャンダルの多かったベルルスコーニ氏を支持できない国民は、カリスマ的で新鮮な主張を行うグリッロ氏の「5つ星運動」支持に回ったとも分析している。ギリシャなどと異なり、「バラマキ」ポピュリストのベルルスコーニ氏と、「新鮮な」ポピュリストのグリッロ氏という、タイプの異なる強力な受け皿の存在が、上院不安定化の一因といえるだろう。
なお朝日新聞は、モンティ氏など中道左派連合が、改革の異議を十分に示すことができなかったと評している。
では、この事態に際し何が懸念されているのか。各紙が共通して指摘するのは、欧州金融危機の再燃だ。実際既にイタリア株・国債は下落している。政治が混迷するとみた市場の動きだと指摘される。安倍政権発足に伴い日本は株高・円安傾向だが、今回の件を機にユーロへの不安が高まれば、再び株安・円高傾向が進む可能性があると懸念される。
では、今後はどうあるべきと各紙は主張しているのか。
朝日新聞は、各政党に対し“政権作りへの必要な妥協”を求めるとともに、政界は腐敗をただし、緊縮財政の必要性を国民に説くよう主張した。また読売新聞は、“世界経済に悪影響を与えないよう”財政改革の継続を求めた。
総じて、今後の懸念拡大・深刻化が不安視される報道であった。