伝説の生き物の特徴とは?幸不幸をもたらす世界の有名な生き物10選
神話や民話などで実在したかのように描かれる伝説の生き物。なんとなく名前は知っていても、いったいどんな姿を持ち、どんな役割や性質があるのかはよく分からないものが多い。善悪の線引きがはっきりしている伝説の生き物もいるが、その両方の面を持つものもいる。
本記事では、有名な伝説の生き物の特徴を詳しく説明する。
目次
かっこいい伝説の生き物
有名でかっこいい伝説の生き物を5つピックアップして紹介する。西洋のドラゴンと東洋の龍、フェニックスと鳳凰などかっこいい見た目が似ているが、性質や特徴の違いなどから文化の違いも感じられて興味深い。
ドラゴン
ドラゴンは、主にヨーロッパ文化圏の伝承や神話に登場する生物である。ドラゴンの語源は、古代ギリシャ語で「大蛇」「巨大な海の怪魚」などの意味を持つラテン語の「draco」に由来する。当初は大蛇もドラゴンといわれていたが、中世以降、トカゲのような身体に羽を持つ姿へと変化していった。
ドラゴンの特徴は、大きく3つある。
- 羽があるトカゲのような容姿をしている
- 口から火を噴く
- 人間を苦しめるものとして描かれる
ドラゴンは人間や動物を苦しめる存在として描かれ、多くの勇者が退治する話が残っている。
龍
龍は中国をはじめとする東アジアの伝説の生き物であり、西洋のドラゴンとは違った性質を持つ。
龍の特徴は、次の3つである。
- 蛇のような身体に4つの足がある
- 鹿のような角を持つ
- 水や気候をつかさどる神として描かれる
龍はウロコを持つ蛇のような長い身体をしているが、鹿のような角に鷹のような爪など、複数の動物の特徴をあわせ持っている。
中国では、皇帝のシンボルであり瑞獣、神獣として扱われていた。日本では、水の神や戦いの神として民俗信仰の対象となっている。雨乞いの際に龍神に祈ることから、蔵の火伏として壁に龍の字を書く風習がある地域もある。
フェニックス
フェニックスは古代エジプトの神話に登場する霊鳥で、500年に1回、自ら火中に身を投じて焼き、その灰から再生するとされる。
フェニックスの姿は地域や年代によって諸説あるが、次のような特徴があるとされている。
- 黄金色に輝くアオサギ(エジプト神話に基づく)
- 金と赤の羽を持つ鷲のような鳥(ギリシャに伝わるフェニックス)
フェニックスの原型は、エジプト神話のベンヌ。ベンヌは炎の中に入って死に、翌朝には復活する霊鳥で、アオサギのような身体を持ち羽は黄金色に輝いているという。
この話がギリシャに伝わると、フェニックスは、鷲のような身体に金と赤の羽が生えている鳥とされた。
「不死鳥」「火の鳥」といわれるフェニックスは、ローマ帝国では繫栄の象徴として描かれている。また、フェニックスは蘇ることからキリストの復活と結びつき、キリスト教徒の間では「再生の象徴」とされる。
鳳凰
鳳凰は、中国の伝説の生き物である。中国神話では、盤古という創造神と共に生まれた四霊(麒麟、亀、龍、鳳凰)のひとつであり、神の使いとしての力を持つ。
鳳凰の容姿の特徴は、下記の通りである。
- 頭は鶏、頷は燕、頸は蛇、背は亀、尾は魚
- 羽の色は黒・白・赤・青・黄の五色
- 首には「徳」、翼には「義」、背には「礼」、胸には「仁」、腹には「信」の文字
中国では徳の高い君主が統治する際に現れるおめでたい鳥として装飾などに使われており、日本でもおめでたい文様として家紋などに用いられている。
ペガサス
ペガサスは、ギリシャ神話に登場する伝説の生き物である。ラテン語ではペガースス、英語ではペガサスという。ペルセウスに殺されたメドゥーサの血から生まれたとされ、特徴は次の通りだ。
- 神馬として雷鳴と雷光を運ぶ役目がある
- 馬の身体に翼を持ち、自由に空を駆け巡る
ベレロフォンの馬として、怪物キマイラや女族アマゾンとの闘いに勝利をもたらした。しかし、傲慢になったベレロフォンがゼウスの元に行こうとした際、ベレロフォンを振り落としたという。その功により、ゼウスの雷鳴と雷光を運ぶ役割を与えられた。
神話では、ペガサスが蹴った蹄のあとから泉が湧き出たという話もあり、水辺によく現れるとされる。
善か悪か?最強の伝説の生き物
伝説の生き物の中には、善か悪かはっきりしないものもいる。ここでは、2つの伝説の生き物について紹介する。
九尾の狐
中国に伝わる九尾の狐は、尾が9本ある伝説の狐である。霊獣とも妖怪ともいわれている。
中国での九尾の狐
- 9本の尾と嬰児のような鳴き声の狐
- 泰平の世や明君がいる世に現れる霊獣
- 人を食う妖怪
日本での九尾の狐
- 福をもたらす瑞獣
- 美女に化けて国を傾ける妖怪
日本での妖怪としての九尾の狐は、美女に化けて国を傾ける存在として描かれた。鳥羽上皇に寵愛された玉藻前が九尾の狐だったという伝説が有名だ。大がかりな退治後も殺生石へと変化し、近寄る動物や人間の命を奪ったといわれている。
鬼
鬼は日本に古くから伝わる伝説の生き物で、昔話にも多く登場する。伝説上では山に棲み、人を食べてしまう存在として恐れられている。見た目の特徴は、次の3つだ。
- 頭に1本もしくは2本の角を生やしている
- 虎の皮のふんどしをつけている
- とげのある金棒を持つ大きな男である
鬼は日本に古くから伝わる伝説の生き物で、昔話にも多く登場する。伝説上では山に棲み、人を食べてしまう存在として恐れられている。見た目の特徴は、次の3つだ。
- 頭に1本もしくは2本の角を生やしている
- 虎の皮のふんどしをつけている
- とげのある金棒を持つ大きな男である
鬼は地獄で亡者を拷問する存在であり、この世を生きる人間の戒めとされているが、一方ではなまはげのように神の化身として災いを払う鬼もいるとされる。青森県では、水田の灌漑に困った村人のために鬼が山から水を引いてくれたという伝説があり、鬼を神として祀った鬼神社がある。この地域では、節分には豆を撒かない風習があるという。
見た目が最強の伝説の生き物
伝説の生き物の中には、複数の動物の特徴を持ち、見た目がグロテスクな生き物がいる。ここでは、見た目が最強の生き物を3つ紹介する。
グリフォン
ギリシャ神話をはじめ、さまざまな伝説に登場するグリフォン。語源はギリシャ語で「曲がった嘴」の意味を持つグリュプスで、フランス語でグリフォンという。
グリフォンは下記のように、なんとも強そうな容姿が特徴である。
- 獅子の胴体に鷲の頭と翼がある
- 鋭い爪で牛や馬を数頭つかんで飛べるほどの力を持つ
ギリシャ神話ではゼウスやアポロンなど神々の車を引く役目や、黄金を守る役目があるとされている。さらに聖書ではエデンの園の門番、バビロニア神話では水の悪魔ティアマトの信者など、さまざまな言い伝えがある。
また、グリフォンの爪や羽には病気を治す力があるとされ、中世ヨーロッパでは貴重品として流通していたが本物かどうかは定かではない。
ケルベロス
ケルベロスは、ギリシャ神話に登場する地獄の門番といわれる伝説の生き物で、次のような特徴がある。
- 3つの頭と蛇の尾、胴体には何匹もの蛇の頭を生やし、青銅の声を持つ
- 甘いものを好む
地獄の入り口で門番をしており、地獄から脱出しようとする亡者を捕まえて食べてしまうという。
大好きな甘いものを与えれば、恐ろしいケルベロスの前を素通りできるという伝説があり、賄賂を渡す意味として「ケルベロスにパンを与える」という言葉がある。
狼男
昼間は人間として生活し、夜になると狼に変身するシーンが思い浮かぶ狼男。東ヨーロッパが起源とされ、北欧神話にも狼を由来とした戦士がいる。
バルト・スラブ系民族の風習では、若者が熊の皮を着けて儀礼的に変身するといわれている。狼男が一般的ではあるが、男女の区別はなく、「人狼」と書き表される場合もある。
狼男は、下記のように悪しき存在としても善き存在としても語られている。
- 畑をあらし、人間を襲う
- 悪魔や魔術師と闘い、豊穣をもたらす
時代が移り変わる中で、呪いや魔術、苦悩が続くことによる精神障害などで、人格が変わってしまった人のことを指すようになっていった。
知っているようで知らない有名な伝説の生き物
ドラゴンやフェニックスなど聞きなじみのある伝説の生き物たちも、詳しく見ていくと思わぬ起源や特徴がある。ドラゴンや龍のように、一見して同じような伝説の生き物と思えるものも、文化の違いによって善にも悪にもなる。
福をもたらすとされる伝説の生き物は、絵柄にして祈りを込めたり、繁栄を願ったりしていた。一方、不幸をもたらすとされる伝説の生き物は、日々の暮らしを正すものとして語り継ぐなど、文明の発達していない社会を生き抜く知恵としてきたのかもしれない。
伝説の生き物からは、大自然とともに生きるための人類の知恵を垣間見ることができる。
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