フィリピンオオコウモリは人間サイズ?!驚きの大きさと迫りくる絶滅の危機
全長1.5m以上にもなるコウモリがこの世に実在しているなんて、信じられるだろうか?2018年にインターネット上で話題になったフィリピンオオコウモリの画像は、人間の成人と同じぐらいの大きさなのだ。
しかし、昨今はCGで写真加工ができてしまうため、人間サイズのコウモリはいくらでも捏造できてしまうだろう。
今回はそんなフィリピンオオコウモリのサイズや生態について調べてみたので、ぜひ最後まで読んでみてほしい。
目次
世界最大級のフィリピンオオコウモリ
結論から言えば、人間サイズのフィリピンオオコウモリは存在する。しかし画像はフェイクだと考えざるを得ない。どういうことか、まずはフィリピンオオコウモリの身長や体重などのデータをみてみよう。
フィリピンオオコウモリの基本データ
正式名称 | Giant golden-crowned flying fox |
体重 | 1.1kg~1.4kg |
翼幅 | 150cm~170cm |
前腕の長さ | 最大21.5cm |
体長 | 約30cm |
ごらんの通り、フィリピンオオコウモリの大きさや体重は普通のコウモリとは大きく違い、まさに巨大だ。けれどよく見ると、体長は30cm前後である。
「なんだ、その程度の大きさか」と思ったならちょっと待ってほしい。このデータのコウモリを想像してみよう。体長が30cmほどとはいえ、翼を広げたら最長で大人の男性ほどにもなる。こんなコウモリがもし群れを成して目の前を飛んでいたら、きっと誰もが恐ろしくなるだろう。
では、フィリピンオオコウモリはどんな生物なのか、ここから特徴を紹介していきたい。
フィリピンオオコウモリは意外にも草食
フィリピンオオコウモリの食事はきわめて質素だ。主に花の蜜を吸い、植物の葉や果実を食べる。こんなに大きな個体なのだから肉食ではないかと疑った人も多いと思うが、一番の好物はイチジクである。吸血性でもない。見た目と違うかわいらしい食生活に、一気に親しみを感じてしまう。
ちなみに、吸血するコウモリは世界に3種類しか存在せず(日本にはいない)、それも主に家畜を狙うものばかりだという。しかし近年、人間の血を吸うコウモリの報告がされているので、今後の情報にも注目していきたいところだ。
フィリピンオオコウモリは夜行性じゃない
コウモリのほとんどは、夜間に超音波を使って障害物や獲物を認識するココウモリの仲間だ。自分が発信した超音波の反響で、距離や方角を測る(エコーロケーション)。しかしフィリピンオオコウモリは、昼行性のオオコウモリの仲間であり、夜行性のココウモリとは大きな違いがある。
それは、視覚が発達しており超音波を発しなくても自在に滑空できるということだ。昼行性なので目がとても大きく耳が小さい。その顔はとても愛らしく、一般的なコウモリのイメージとはかけ離れている。
フィリピンオオコウモリを取り巻く環境と危険性
ここからはさらに踏み込んで、フィリピンオオコウモリの生息地や注意点、彼らの現在抱える問題について紹介していこう。
フィリピンオオコウモリはフィリピンだけに生息
その名の通り、フィリピンオオコウモリはフィリピンのいくつかの島で生活している固有種である。特にルソン島のスービック経済特別区は「Bat Kingdom(コウモリ王国)」と呼ばれるほどコウモリの種類が豊富で、フィリピンオオコウモリも生息している地域だ。モンフォートバット自然保護区も、コウモリ観察ではとても有名な観光名所なので、フィリピンオオコウモリに出会うならぜひ訪れてみたいスポットである。
その他の生息地としては、ボホール島、ボラカイ島、レイテ島、ミンダナオ島、ミンドロ島、ネグロス島、セブ島で確認されている。
フィリピンオオコウモリが致死性ウイルスを媒介?!
なかなか出会う機会のないフィリピンオオコウモリだが、もし観光で見に行くのなら注意したいことがある。
世界中で多くの死者を出している、エボラ出血熱をご存じだろうか。フィリピンオオコウモリは、そんな危険なウイルスを始め、狂犬病やコロナウイルスも媒介したと言われているのだ。フィリピンに行くとコウモリウォッチングやコウモリと触れ合える場所がいくつかあるが、噛まれたり引っ掻かれたりしないよう、十分に注意してもらいたい。
訪れる前には狂犬病のワクチン接種など、しっかり準備していこう。
以下はフィリピンオオコウモリが媒介するウイルスとその症状だ。
主なウイルス | 感染症状 | 死亡率 |
エボラウイルス | 全身倦怠感 発熱(38度以上の高熱) 頭痛 筋肉痛 のどの痛み 嘔吐 下痢 内臓機能の低下 | 死亡率約50% |
狂犬病ウイルス | 発熱 食欲不振 興奮性 麻痺 幻覚 精神錯乱などの神経症状 昏睡 | 死亡率ほぼ100% |
ニパウイルス | 発熱 頭痛 筋肉痛などインフルエンザ様症状 見当識障害 痙攣 昏睡などの脳炎症状 | 死亡率40% |
ヘンドラウイルス | インフルエンザ様症状 神経症状 | - |
絶滅危惧種に指定されているフィリピンオオコウモリ
フィリピンオオコウモリの数は毎年減少の一途をたどっており、現在は絶滅危惧種に指定されている。国際自然保護連合(IUCN)によれば、1986年から2016年までの間に、個体の数が50%以上減った疑いがあるのだ。なぜこれほど急激に数が減ってしまったのか。その主な原因は『ブッシュミート』と言われる食肉用の狩猟や販売、個人消費、森林の減少である。
コウモリの巣のほとんどは保護地区の中にあるが、それでも違法な狩猟が減らない現状に、関係者は頭を抱えているという。コウモリの住みかである原生林も90%が破壊されており、食料の危機にさらされている。実は、コウモリウォッチングに訪れた観光客の騒音で親子が離れ離れになる事例も報告されている。フィリピンオオコウモリたちの穏やかな生活を奪っているのは、私たち人間なのだ。
フィリピンオオコウモリが絶滅しないために
人間サイズのフィリピンオオコウモリは、実在する動物だ。しかし、衝撃的な大きさとは裏腹に、かわいらしい一面を持つ彼ら。大きな翼で群れを作る様子は年々見られなくなってきている。恐ろしいウイルスの媒介者であるとはいえ、人間の都合で絶滅の危機に立たされていることを思うと、動物たちとの向き合い方を深く考えさせられる。
フェイクらしき画像がきっかけではあるが、世界最大級のフィリピンオオコウモリを知ることで、一人でも多く環境への意識が高まる人が増えることを願う。