中国の世界最大ダム計画めぐる数々の懸念 インドは「兵器化」に警戒感
◆CO2削減のためのダムが生態系を破壊する皮肉
環境負荷も無視できない。科学ニュースを扱う『Phys.org』は、三峡ダムの建設時の二の舞となり、環境団体から強い反発を受ける可能性があると指摘する。三峡ダムのプロジェクトでは、140万人が移住を余儀なくされた。新たなメトクダムに関しては、ヤルンツァンポ川が多様な生物相を有することから、動植物への悪影響が懸案となっている。ダムで水流が分断されれば、魚類の自由な往来は遮断される。また、従来であれば特定の時期に毎年起きる洪水が栄養分豊かな土壌を下流域に提供してきたが、これも妨げられることになる。
宗教上の反発も必須だ。ヤルンツァンポ川は、流域のチベットの人々にとって非常に神聖なものだ。カタールのアルジャジーラ(2月8日)は、同河川はチベット信仰において位の高い女神の化身と捉えられており、地元の人々は川に畏敬の念を抱いていると説明している。このような川には決して近づかず手を加えないという、暗黙の掟が守られてきた。しかし、中国への併合後は伝統的なしきたりを無視したインフラ事業が続く。あるチベット民族の末裔は、「中国人は自分たちの発展に利することは何でもやるし、チベット人との話し合いなしに行われるこうしたことに非常に苛立ちを感じる」との感情を吐露している。
すでに完成した三峡ダムの状況を鑑みれば、メトクダムにも施工上や運用上の問題が発生する可能性は否めない。二酸化炭素のゼロエミッションに寄与する水力発電計画だが、その犠牲は甚大になる恐れがある。
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