イタリア、学校の外国籍生徒に新たな上限 ブルカ・ニカブも禁止

イタリア・ミラノの学校で授業を受ける子供たち(資料写真)|MikeDotta / Shutterstock.com

 イタリア政府は、一定の就学歴などの条件に該当する外国籍の児童・生徒について、1クラスあたりの割合を原則30%までとし、顔を覆う衣類の校内での着用を禁止する政令法を承認した。地中海中央部に位置するイタリアは、欧州でも移民流入の影響を強く受ける国の一つで、移民の社会統合は政府にとって大きな課題となっている。欧州の他の国でも移民や宗教的な服装をめぐる規制が導入されており、イタリアでも学校を舞台に新たな措置が打ち出された。

◆移民増加 一部地域に集中も
 今回の措置は、メローニ首相が率いる右派政党「イタリアの同胞」の青年部が主催したイベントで、同首相が9月20日に発表。その後、政府は24日の閣議で学校に関する政令法を承認した。

 メローニ首相は20日の演説で、教室にイタリア語を理解できない子供が1人しかいない場合は、仲間や教師の助けを借りて言語を習得し、素早く社会に溶け込むことができると主張。しかし、そのような子供が多数、あるいは過半数を占めるようになれば、それはもはや統合ではなく放置にほかならないと述べ、クラス内の外国人生徒の割合に上限を設ける考えを示した。

 CBSニュースによれば、イタリアの調査機関、ISMU財団のデータでは、学校に在籍する生徒のうちイタリア国籍を持たない生徒は11.6%を占めている。ミラノのカトリック・サクレ・クール大学の社会学教授、マリアグラツィア・サンタガティ氏によれば、人口減少が進む地域の中には、イタリア以外にルーツを持つ住民が集中し、必然的にクラス内の非イタリア人生徒の割合が高くなっている地域もあるという。

 24日に承認された政令法では、小学校の1年生について、イタリア国籍を持たず、イタリア生まれではない、または少なくとも2年間の就学前教育を受けていない児童を原則としてクラスの30%以下とする。中学校と高校の1年生では、イタリア国籍を持たず、イタリアの教育制度で少なくとも3年間、所定の課程を修了していない生徒が対象となる。特別な事情がある場合には例外も認められる。ANSA通信などが報じた。

 メローニ首相は20日の発表時、「教室で少数派になり、疎外感を感じているのがイタリア人の子供たちであるなどということは、あってはならない」と述べた。政府は今回の措置について、外国籍の児童・生徒の統合を促し、「ゲットー化した教室」が生まれるのを防ぐ狙いがあるとしている。

◆ブルカ、ニカブも禁止 欧州各国でも規制
 政令法には、学校への適応に深刻な困難を抱える生徒について、家庭でもイタリア語が十分に理解されていない場合、保護者に無料のイタリア語講習を受けるよう求める措置も盛り込まれた。講習に参加しなかった場合、200〜1000ユーロの罰金が科される可能性があるとANSA通信は伝えている。

 また、健康上や安全上の特別な理由がある場合を除き、顔を覆った状態で学校の授業や課外活動などに参加することを禁止する。違反した場合の罰金は200〜1000ユーロで、未成年者の場合は保護者が対象となる。

 メローニ首相は発表時、特にブルカ(全身と顔を覆い、目の部分が網状になっている衣類)とニカブ(顔を覆い、目だけを出す衣類)の禁止に言及。イタリアでは、実際の伝統であれ想定された伝統であれ、それを理由に若い女性は顔を隠すべきだと決めることはできないとし、男女平等は譲れない原則だと訴えた。

 すでにフランス、ベルギー、オーストリア、デンマーク、スイスなど欧州の複数の国では、公共の場などで顔を覆うことに制限を設けている。ロイターは、移民、とりわけイスラム教徒が多数を占める国々から来た人々の社会統合はイタリア政治や社会で議論の的となっており、宗教的象徴、文化的統合、市民権、移民政策をめぐる議論は、しばしば世論を二分していると伝えている。

◆総選挙控え右派内の競争激化 野党や専門家は批判
 メローニ首相の方針は与党連合のメンバーから支持を得た一方、野党や法律の専門家からは批判も出ている。ユーロニュースによれば、エンナ大学の憲法学教授、サルヴァトーレ・クルレリ氏は、外国人の子供を含め「学校はすべての人に開かれている」と規定する憲法第34条で認められた権利を侵害する恐れがあると指摘した。

 左派からも批判が出ている。野党・民主党の議員はユーロニュースに対し、メローニ氏がドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」など欧州の急進右派が掲げる主張に追随していると批判した。

 イタリアでは2027年に総選挙が予定されている。さらに、移民問題でより厳しい措置を主張する元イタリア軍将軍ロベルト・ヴァンナッチ氏の参入によって、右派内での競争も激しくなっているとユーロニュースは報じている。こうした政治状況のなか、学校での外国籍児童・生徒の割合や顔を覆う衣類をめぐる新たな措置は、移民政策をめぐる議論をさらに活発化させそうだ。

Text by 山川 真智子