ヒト女性とネアンデルタール人男性の交配、多くを占めた可能性 DNA解析で判明
ドイツの博物館に展示されているネアンデルタール人の男性と女性の復元模型|Martin Meissner / AP Photo
数万年前、ヒトとネアンデルタール人は同じ地域に暮らし、ときおり親密な関係を持っていた。しかし、誰が誰と関係を結んだのか、そしてなぜそうなったのかについては、ほとんど分かっていない。
新たな遺伝子解析が、いわば「古代のゴシップ」を浮かび上がらせた。交配は、現生人類(ヒト)の女性とネアンデルタール人の男性の組み合わせで起きることが、より多かったという。
それが具体的にどのように起きたのかは、依然として大きな謎である。ヒトの女性がネアンデルタール人の集団に加わったのか。それとも、ネアンデルタール人の男性が、より大きなヒトの居住地に引き寄せられたのか。こうした接触は平和的なものだったのか、ぎこちないものだったのか、密やかなものだったのか、それとも暴力を伴うものだったのか。
ミシガン大学の集団遺伝学者、シンジュン・チャン氏は新たな解析について、「私たちは過去にさかのぼることができない以上、これがどのように起きたのかについて決定的な答えが得られるかどうかは分からない」と語る。
だが、2月26日に科学誌「サイエンス」に掲載された研究は、ネアンデルタール人と現生人類が交配した際には、その逆の組み合わせではなく、ネアンデルタール人の男性と現生人類の女性という組み合わせに偏りがあったことを示していると、ペンシルベニア大学で遺伝学を研究する著者アレクサンダー・プラット氏は述べた。
ネアンデルタール人とヒトが交配していたことは、すでに科学的に確認されている。サハラ以南のアフリカを除くほとんどの現代人のDNAには、少量ながら重要な割合でネアンデルタール人のDNAが含まれているからだ。そこには、特定の病気への抵抗力を高める遺伝子もあれば、逆に病気にかかりやすくする遺伝子も含まれている。
一方で、ネアンデルタール人由来のDNAがヒトのゲノム全体に均等に分布していないことも知られていた。
特に、細胞内の常染色体と比べると、性染色体の一つであるX染色体には、ネアンデルタール人のDNAが驚くほど少ない。
科学者たちは当初、その領域にある遺伝子が単に有益ではない、あるいは有害ですらある可能性を考えた。そうした遺伝子パターンを持つ個体は生存率が低く、時間の経過とともに進化の過程で淘汰されたのではないか、という推測である。
あるいは、両種がどのように交わったのかという「交配のあり方」によって、この違いが説明できるのではないかとも考えられた。
この謎を解くため、プラット氏らは視点を変え、約25万年前の交配の際にネアンデルタール人のゲノムに入り込んだヒトのDNAに注目した。
遺伝子を比較した結果、ネアンデルタール人のX染色体には、より多くのヒト由来の「指紋(形跡)」が残っていることが分かった。これは、ヒトのX染色体においてネアンデルタール人のDNAが予想より少ないという現象と、鏡写しのような関係にある。
この鏡像のようなパターンを最もよく説明できるのは、交配行動だとプラット氏は説明する。これは、性染色体が親から子へ受け継がれる仕組みに由来する。
遺伝学的な女性は2本のX染色体を持ち、男性は1本のX染色体と1本のY染色体を持つ。そのため、集団内に存在するX染色体のうち、平均すると3分の2は母親から受け継がれることになる。
もしヒトの女性とネアンデルタール人の男性の交配が、その逆よりも多かったとすれば、数千年の間に、まさに今回観察されたような結果が現れるはずだ。すなわち、ネアンデルタール人のX染色体にはより多くのヒトDNAが残り、ヒトのX染色体にはより少ないネアンデルタール人DNAが残る。
プリンストン大学で進化ゲノミクスを研究するジョシュア・エイキー氏(今回の研究には関与していない)は「彼らは、このパズルの欠けていた重要なピースを埋めるための大きな一歩を踏み出したと思う」と評価する。
もっとも、この研究がほかの可能性を完全に排除できるわけではない。例えばチャン氏は、ヒトの男性とネアンデルタール人の女性の間に生まれた子供が、単に生存しにくかった可能性もあると指摘している。
それでも、この研究が示した最も単純で可能性の高い説明は、同時に最も興味深いものでもある。
「これは純粋なダーウィン的な適者生存の結果ではない」とプラット氏は言う。「私たちが互いにどのように関わり合い、当時の文化や社会、行動がどのようなものであったかという、人間的な営みの結果なのだ」
By ADITHI RAMAKRISHNAN AP Science Writer




