ポジティブ心理学の専門家は自分の助言を実践していない 彼らの実際の行動がウェルビーイングの鍵
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著:Jolanta Burke(アイルランド王立外科医学院、Associate Professor, Centre for Positive Health Sciences)
ポジティブ心理学は、世界中で展開されているウェルビーイング・プログラムの根幹を成している。メンタルヘルスの向上やより良い人生を目指す多くの人々は、ウェルビーイングを高めるための意図的な努力に焦点を当てた活動プログラムに従うよう教えられる。
だが、筆者が同僚と行った最近の研究によれば、ウェルビーイングの専門家はこうした活動を他者に勧めることが多い一方で、現実には自分自身ではほとんど実践していない。この食い違いは、長期的にウェルビーイングを維持するために本当に必要なことについて、重要な示唆を与えてくれる。
筆者はインタビューを通じて、ポジティブ心理学の専門家・実践家22人に話を聞いた。中には10年以上の経験を持つ人もいた。全員が、クライアントや友人、家族にウェルビーイングの活動を定期的に勧めており、個々人のニーズに合わせて各活動を調整すると語った。
だが、彼ら自身がポジティブ心理学の実践をどう取り入れているかを尋ねると、そうした活動に定期的に取り組んでいないことが明らかになった。彼らがそれらを使うのは、つらい時期で、ウェルビーイングを底上げしたいと感じたときに限られる傾向があった。
ポジティブ心理学のプログラムでは、「感謝日記」(感謝していることを書き留める)を毎日つけることや、週に3回の親切な行いをするといった活動が勧められることが多い。これらのプログラムで強調されるのは、より前向きになるために、意図的に、そして集中的に努力することだ。
しかし、我々の研究は、専門家が多くのポジティブ心理学プログラムが教えるような形でウェルビーイングを用いていないことを示した。活動のスケジュールに従うのではなく、彼らのウェルビーイングは、柔軟でウェルビーイング志向のマインドセットから生まれていた。我々はこれを「メリオトロピック・ウェルビーイング・マインドセット」と名付けた。
この語は、ラテン語の「melior」(よりよい)と、ギリシャ語の「tropism」(〜へ向かう動き)に由来する。人生を生きるに値するものへと向かう、という発想である。この考え方により、専門家はウェルビーイングを「こなすべきタスクの束」として扱わず、日々の生活の一部として捉えていた。
また、専門家の誰一人として、幸福や前向きさを積極的に「追いかける」ことはなかった。嫌な日があっても、それをそのままにしておき、人生にはときに困難が伴うことを受け入れていた。
調査に参加した専門家たちは、患者にウェルビーイング向上のために勧めるような、劇的で意図的な生活の変化を行ってはいなかった。彼らはすでに、日常の中で人生をより意味深く感じさせることを定期的にしていた。例えば、毎日本を読む時間を確保する、地域の慈善活動でボランティアをする、好きな料理を作る、あるいはヨガを実践するといったことだ。
こうした活動はポジティブ心理学プログラムの一部として勧められることもあるが、ここでの違いは、専門家がそれらを単に勧められたから行うのではなく、自分のアイデンティティの一部であったり、心身のバランスを保つのに役立ったりするから行っていた点にある。
彼らは身体にもよく目を配り、睡眠、栄養のある食事、定期的な身体の動きを優先することで、心と同じくらい注意深く身体をケアしていた。
さらに、自分にとって身体的・社会的環境がどう作用するかを強く意識していたため、ウェルビーイングを守るための先回りの行動をためらわなかった。例えば、仕事で不幸を感じたり、周囲に自分を消耗させる人がいたりすれば、ためらうことなく代替案を探したり、接触を制限したりした。
加えて彼らは、人生を謳歌する機会に対して心を開いていた。ある参加者は、子供を迎えに学校の外で待っていたときのことを語った。天気があまりに気持ちよかったので靴を脱ぎ、芝生の上を裸足で歩いたという。ごくささやかな行為だが、それが気分を押し上げた。
別の参加者はひどい1日を過ごしたが、その夜ようやくベッドに入ったとき、戦争で故郷を追われた人々と比べ、自分の家の温かさと安全に対する感謝の念がこみ上げてきたという。
ポジティブ心理学への理解が、こうした日常的な「ウェルビーイングを押し上げる機会」に気づく助けになっていた。
◆マインドセットの変化
毎年、新しいウェルビーイングアプリが登場し、学校はカリキュラムにウェルビーイングを組み込み、組織は職場のウェルビーイング・プログラムに大規模な投資を行っている。だが、こうした取り組みの影響は限定的にとどまる。さらに、ウェルビーイング・プログラムは逆効果になり得るとする報告もある。
我々の研究結果は、これらのプログラムの効果がなぜこれほどばらつくのかを説明する手がかりになり得る。また、前向きな活動は、生活の中でウェルビーイングの実践を広範に取り入れてきた人にとっては、必ずしも同じように効果的ではない可能性も示している。
今回の調査結果は、ポジティブ心理学の研究者や専門家が優先順位を見直す必要があることも浮き彫りにした。ますます長くなるウェルビーイング・プログラムを作成したり、必ずしも有益とは限らないことが証明されている「幸福の追求」を促したりするのではなく、ウェルビーイングの実践がもたらす長期的影響の理解に焦点を当てるべきだ。
ウェルビーイングを高めたい人にとって、今回の結果は、常に「自分磨きに励む」必要も、幸福を追い求め続ける必要もないという重要な注意喚起になる。ウェルビーイングの専門家は、劇的な生活の変化やウェルビーイング・プログラムに頼ることはまれだ。
その代わりに彼らは、本当に大切なものへと自分を向け直すマインドセットを、静かに育てている。嫌な日に幸福を追いかけたり、無理に前向きに考えようとしたりする話ではない。自分らしさに合う形で、人生をより価値あるものだと感じさせるものへ、やさしく歩み寄っていくことだ。そのマインドセットの転換は、私たち全員が取り入れられる。
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
Translated by NewSphere newsroom
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