中国富裕層、米国の代理出産ビジネスに殺到 「後継者」づくりの億万長者も
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アメリカでは、代理出産を手配する業者や専門の機関などがあり、一大ビジネスとなっている。多くの州では国際的な依頼者を禁じていないとされ、米紙によると国際的な依頼者の41%が中国だったという。代理母を通じて多数の子供をもうけたとされるエリート男性もおり、ディストピア小説さながらの世界に好奇の目が注がれている。
◆理由は後継者育成? 代理出産で大量に子作り
代理出産で最近話題となっているのが、中国のゲーム会社、多益網絡(Duoyi Network)の創業者で富豪の徐波氏(48)だ。この件を詳細に報じた米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)によれば、徐氏は過去に中国のソーシャルメディアを通じ「50人の優秀な息子を求めている」と発言。「子供を増やすことですべての問題を解決する」と述べていたという。
徐氏が代理出産のヘビーユーザーだったことは、ロサンゼルスの家庭裁判所で発覚した。代理出産申請書を審査していた裁判所の書記官たちが、複数の申請書類のなかに徐氏の名前が繰り返し登場していることに気付いたのだ。徐氏は少なくとも4人の胎児に対する親権を求めており、その後の追加調査で、少なくとも8人の子供をもうけている、もしくは今後もうけようとしていることが判明したという。(WSJ)
2023年夏の法廷での非公開尋問には、徐氏は通訳を介しビデオ通話で出席。代理出産によりアメリカで生まれた20人ほどの男児に、将来的に事業を継がせる計画だと、徐氏は明かした。子供たちは乳母によりカリフォルニア州で育てられており、徐氏は多忙を理由に、その時点で子供たちに会ったことはないと述べた。担当判事は、徐氏の説明が子育てとは縁遠いものだとして強い懸念を示し、親権認定の申請を却下したという。
◆イーロン・マスク氏に重ねられる思想? 富裕層の多産観
徐氏を巡る子供の人数については、主張が食い違っている。WSJによれば、徐氏の元交際相手が中国のソーシャルメディアに、徐氏は300人以上の子供をもうけていると書き込んだのが発端だった(代理出産に限らない主張)。その後、徐氏のゲーム会社は、アメリカ在住の代理母を通じて100人以上の子供がいると認めたが、英タイムズ紙によると、さらに後になって「誤訳であり、代理出産による子供は12人だ」と説明を変更したという。
WSJによると、徐氏のほかにも、アメリカでの代理出産で数十人、数百人の子供を作る計画を立てている中国人エリートの存在が確認されているという。
中国では代理出産が禁止されているため、以前からアメリカでの代理出産は中国人の間で人気が高いと、タイムズ紙は指摘する。アメリカには国際的代理出産に対応する代理店ネットワークができており、中国人専門の業者もあるという。ある仲介機関の責任者は、顧客のほとんどは「合理的で責任感のある」親だと説明。法外な数の子供が欲しいというクライアントは断っているが、その一方で、慣れっこになるほど、そうした依頼が来ているのは事実だとしている。
タイムズ紙によれば、たくさんの子供を欲しがる中国人富豪たちは、イーロン・マスク氏のようなハイテク業界の高所得者層の理論に影響を受け、「遺伝的に優れた子孫を多数持つ義務がある」と信じているという見方もある。ある代理出産仲介業者は、美しく賢い女性に精子を提供し、子供を産ませ育てさせるという、マスク氏が実践するモデルを説明。これに触発された大量子育て計画が、中国人富裕層のアメリカンドリームになっていると指摘している。
テクノロジー系ニュースサイト『ガジェット・レビュー』は、徐氏のような事例は、中国エリート層の間で広がりつつある動きの一端だと指摘する。中国の法律を回避し、アメリカの出生地主義(出生地によって市民権が与えられる制度)を利用して子供に市民権を与えようとする点に特徴があるとして、同サイトは、こうした行為を即席の「王朝」作りだと批判している。
◆子供は製品ではない 代理出産ビジネスへの批判
代理出産を利用する中国人エリートのなかには、優れた男子にビジネスを継がせたいという徐氏のような考えのほかにも、女子ばかりをもうけて世界の指導者と結婚させたいという願望もあるという。(WSJ)
ガジェット・レビューによれば、児童福祉団体の関係者は、脆弱な代理母たちを使い子供たちを商品化するアメリカの代理出産ビジネスを取り巻く仕組みは、組織的な搾取だと指摘。裕福な外国人が女性の子宮を購入できることは、制度が根本的に破綻していることを意味すると批判した。
さらに、ペイパル創業者のピーター・ティール氏などの投資家による、完璧な赤ちゃんの選別を可能にする生殖医療関連企業への資金提供も、エリートたちの代理出産熱を高めているという。ガジェット・レビューは、子供を製品とし、アメリカを工場とする製造業が形成されつつあると述べ、危機感を募らせている。




