消えた相手から「会いたかった」と責任転嫁 要注意の恋愛サイン「ゴーストライティング」
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突然音信不通になった相手が、数カ月もたってから何事もなかったかのように戻ってくる。「会いたかった」などと言われ、断れば、こちらが冷たい人間であるかのような空気になる。こうした手口は、音信不通の「ゴースティング」と精神的に揺さぶる「ガスライティング」を組み合わせた「ゴーストライティング」と呼ばれ、SNSなどで経験談が広がり、アメリカの主要メディアでも新たな恋愛のトレンドとして取り上げられている。
◆突然消え、しれっと戻ってきた
ゴーストライティングとは、「ゴースティング(別れ話もなく消える)」と「ガスライティング(精神的支配)」を組み合わせたワードだ。
米メンズヘルス誌のライターは、自身の体験を振り返っている。交際相手の男性は理想的に思えたという。お互いのジョークに笑い合い、趣味も似ていた。ところがある日を境に返信がぴたりと途絶え、やがて最初に出会ったデーティングアプリでも相手に「アンマッチ」されていたことに気づいた。数カ月後、ようやく傷が癒えた頃になって、彼からDMが届く。「久しぶりだね」「恋しい」などの内容で、まるで何事もなかったかのように連絡を再開しようとしてきた。こうした態度こそが、典型的なゴーストライティングだ。
米コスモポリタン誌も、別の事例を紹介している。連絡が取れなくなっていた相手が突然戻ってきたため理由を問いただすと、「毎日メッセージを送る決まりでもあった?」「そんなに構ってほしいとは思わなかった」と突き放される。相手の一方的な音信不通が、いつの間にか自分の要求過多だったかのようにすり替えられ、責められている空気になるのも、ゴーストライティングによくあるパターンだ。
◆あたかも被害者側の落ち度かのよう
メンズヘルス誌の取材に応じた臨床心理学者のカイラー・シャムウェイ氏は、問題の本質は、被害者側がまるで状況を誤解していたかのように、話をすり替えることだと説明する。一方的に連絡を絶つだけでなく、「大げさだよ」「本気だなんて言ってないよね」など、話を曲げようとするのも特徴だ。
米ワシントン・ポスト紙は、この「ゴーストライティング」を恋愛の「オレンジフラッグ(要注意サイン)」の1つとして挙げる。相手が数日から数週間姿を消したあと、何事もなかったように戻りつつ、理由を問う側を「気にしすぎ」「神経質」などと扱い、問いただすこと自体をおかしいかのように見せるのが特徴だ。臨床心理学者のサラ・グンドル氏は、その影響は精神を「不安定化させるもの」だと説明し、被害者が「期待しすぎなのか」「自分の記憶違いなのか」と自分を疑う状態に追い込まれやすいと指摘している。
◆なぜ人はゴーストライトするのか
そもそも、なぜこのような行動に出る人がいるのか。米サイコロジー・トゥデイ誌は、3つの理由を挙げている。1つ目は、健康問題や金銭トラブルなど、明かしたくない事情が生じたケース。2つ目は、本命の相手がいたがうまくいかず、キープしていた相手のもとへ戻ってきたケース。3つ目は、単に人を操るのが癖になっている、嘘つき体質の人物だ。
被害に遭いやすいタイプの人には、共通点があるという。メンズヘルス誌の取材に応じた臨床心理学者のカイラー・シャムウェイ氏は、共感力が高く誠実で、恋愛に不安を抱きやすい人ほどターゲットになりやすいと指摘する。相手の事情をくみ取ろうとして自分を抑えがちで、疑うよりも信頼を優先する傾向がある人ほど、音信不通の不自然さに目を向けにくい。そこにつけ込み、責任を相手側に転嫁するのがゴーストライティングの卑劣さだ。
音信不通だった相手が戻ってきたとき、受け入れるかどうかは慎重に見極めたい。




