年末年始の集まりがストレス?専門家が勧める「灰色の石」戦略 利点と落とし穴
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ホリデーシーズンは、楽しくにぎやかな時期であると同時に、多くの人にとっては緊張感のある家族の集まりの時期でもある。
「ときどきやたらと踏み込んできたり、自分を刺激したり、虐待的なことを言ってくる親戚と、どう付き合えばいいのかと考える人は多い」と、アメリカ精神医学会の次期会長マーク・ラパポート氏は言う。
こうしたストレスフルな家族関係を和らげようとするとき、なかには「グレイロッキング(gray rocking)」と呼ばれる戦略を使う人もいる。
ポイントは「灰色の石みたいに、つまらない人を装うこと」だと、メリーランド州を拠点に活動する臨床心理士サマンサ・ホワイテン氏は説明する。「やっかいな人たちに、攻撃材料になりそうなものをいっさい与えないようにするのです」
では、グレイロッキングは本当にホリデーシーズンを乗り切る賢いやり方なのだろうか。専門家たちの見解を紹介する。
◆効果的なとき
グレイロック法は、自己愛的で人を操作したり、いわゆる「有害」な人たちとの関わりを管理する手段として知られていることが多い。ただ、そこまで極端なケースに限る必要はない。この方法は「関わらざるを得ない相手との争いをできるだけ小さくしたい、というあらゆる状況で使える」とホワイテンは言う。
グレイロッキングをするときは、わざと自分を「つまらない人」に見せる。感情的なやりとりに巻き込まれず、丁寧ではあるが短く、はっきりしない返答だけを返すようにする。相手が求めている注目やリアクションを与えないことで、興味を失わせ、その場から離れさせるのがねらいだ。
たとえば、家族全員が集まるホリデーパーティーに招かれたとする。そこには、いつもあなたの神経を逆なでするボブ叔父さんも来る。パーティーそのものを欠席したいわけではなく、ただボブとの会話を早めに落ち着かせて、楽しく過ごしたいだけだ。そんなときに使えるのがグレイロッキングだ。
ボブが政治の話をふってきて、逃げ場がなくなるかもしれない。これまでの年なら、つい乗ってしまい、口論になっていたかもしれない。だがグレイロッキングを使うなら、「そういう考え方もあるね。ところで仕事はどう?」のような、当たり障りのない返答で争いをかわす。
ラパポート氏は、このテクニックの効果についての研究が発表されているのは知らないが、その目的自体は理にかなっていると言う。
「こういう状況で重要なのは、感情的に関わらないことです」と話す。
◆グレイロッキングが害になるとき
グレイロッキングは、急場しのぎとしては役に立つことがある。しかし、とくに習慣的に使うと、自分の感情の健康や人間関係にマイナスの影響が出るおそれがあると、カリフォルニア州の夫婦・家族セラピスト、ダーリーン・ランサー氏は警告する。
「やがて人は感覚が麻痺してきます」とランサー氏は言う。「傷つきや怒りの感情に対しても、だんだんシャットダウンするようになってしまうのです」
この戦略は、あなたと大切な人との間に距離を生むこともある。
「長く続けて育てていきたい関係には、基本的にはあまり勧めない」とランサー氏は言う。もしその関係をこの先も健全に続けたいなら、「理想は、もっと自分に正直であること」そして問題を話し合うことだと彼女は述べる。(もちろん、本当に有害だったり危険な関係なら、離れたり、接触を制限したりするほうがよい場合もある。)
短期的であっても、相手を完全にシャットアウトするやり方は、相手を怒らせたり傷つけたりすることがある、とラパポート氏は付け加える。あなたにとっては攻撃に感じられるとしても、大おばのサリーにしてみれば、「いつ子供を持つの?」と何度も聞くのは、ただの世間話のつもりかもしれない。
こういうケースでは、丁寧かつ率直に伝えるほうが、かえってうまくいくこともあるとラパポート氏は言う。
「ときには、こう認めて言うのがいいこともある。『その話題について話したいというのは分かるけど、今はその話をしたくないんだ』とね」と提案する。
◆事前に作戦を立てておく
グレイロッキングをうまく使うには、事前の準備が大事になる。「人は、具体的な目標があると本当にうまくやれる」とホワイテン氏は言う。そのため、集まりの場で起こりそうな難しい状況を、どうさばきたいのかをあらかじめ考えておくといい。そうしておけば、いざその場になったとき、感情的に反応する代わりに、決めておいたプランに従うことができる。
自分にとってどんなやりとりが一番きついのかを考え、その場を穏やかにやり過ごす返答をいくつか用意しておくといい。たとえばランサー氏によれば、母親からありがたくないアドバイスを押しつけられたとき、きつく言い返す代わりに「ありがとう、考えてみるね」と中立的に返す、というような具合だ。
ラパポート氏は、もし場がヒートアップしそうなら、同じ考えの家族や友人に助けを頼むのも一つだと言う。
「前もって連絡して、『もしまたああなりそうだったら、僕(私)をその場から連れ出して』と頼んでおくといい」と言う。
薬物やアルコールの量をコントロールすることも大事だ。こうした物質は、冷静さを保つのを格段に難しくする。
最後に、できるだけいい部分――パーティーで本当に会いたい人たち――に意識を向け、同時に、難しい相手に対して少しだけ共感を向けてみるといい、とラパポート氏は言う。
「あなたの中で大きな感情反応を引き起こす言動も、その人たちのもろさや弱さ、人とうまく関わる術を知らないことに思いを巡らせていると、少しは引き金になりにくくなるかもしれない」と話す。
ほんの少しの寛容さが、想像以上に大きな効果を生むことがある。なんといっても、ホリデーシーズンなのだから。
By JAMIE DUCHARME




