常夜灯でも心筋梗塞リスク上昇 夜の光で最大47%増 女性・若年層で影響大 研究
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夜の明るい照明や画面の光が、心不全や心筋梗塞(こうそく)、脳卒中など重大な心血管疾患の発症リスクを押し上げる可能性が示された。フリンダース大学の研究チームは、イギリスの約8万9000人を対象に手首装着型センサーで光曝露を連続計測し、総計約1300万時間分のデータと最長9年半の追跡記録を解析した。論文はJAMAネットワーク・オープンに24日付で掲載された。
夜間の光曝露が最も明るい群では、心不全の発症確率が56%高く、心筋梗塞が47%高かった。さらに、冠動脈疾患が32%高く、脳卒中が28%高かったという。運動や食事、睡眠習慣、遺伝などの要因を調整した後も関連は維持されたとする。
研究は、従来多かった衛星画像や自己申告に依存する方法ではなく、ウェアラブルで室内を含む実際の光環境を捉えた点が特徴だ。著者らは、夜間の明るい光が体内時計を乱し、自律神経やホルモン分泌の変化を介して心血管系に負荷をかけうると説明する。筆頭著者のダニエル・ウィンドレッド氏は「夜間の光曝露そのものが強く独立したリスク因子であることを大規模に示した」と述べ、就寝前の光量を減らすことが予防につながり得ると指摘した。
影響は女性や若年層で大きい傾向がみられた。共同著者のショーン・ケイン教授は、女性は光による体内時計の乱れにより敏感かもしれないとし、もう一人の共同著者アンドリュー・フィリップス准教授は、問題はシフトワーカーや繁華街だけに限られないと強調した。低照度でも室内光やスマートフォンの画面、テレビのつけっぱなしなど日常の習慣が体内リズムを妨げうるという。
著者らは、家庭や病院、都市の照明設計でも夜間の光曝露を抑える指針づくりが必要だと訴える。一方で観察研究である以上、残余交絡の可能性は残る。因果関係の確定や、光の波長や時刻別パターンとリスクの定量的関係の解明には介入研究が求められる。とはいえ、遮光カーテンや照明の減光、就寝前の画面利用を控えるといった対策はコストも低く実行しやすい。研究チームは「体内時計を守ることが心疾患との闘いに有効な手立てになり得る」と述べ、日常の光環境を見直す重要性を強調している。




