「悪夢の細菌」感染、米で急増 市中感染の恐れとCDC警告
カルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)細菌のイラスト=CDC提供|Stephanie Rossow / CDC via AP
アメリカの疾病対策センター(CDC)の科学者による新たな報告書によると、薬剤耐性を持つ「悪夢の細菌」による感染率が2019年から2023年の間に約70%上昇した。
22日にアナルズ・オブ・インターナル・メディシン誌に掲載された論文でCDCの研究者らが記述したところによると、この増加を主にけん引したのは、いわゆるNDM遺伝子を持つために治療が困難な細菌であった。これらの感染症に有効な抗生物質は2種類しかなく、それらの薬は高価なうえに点滴で投与する必要があると研究者らは述べた。
この遺伝子を持つ細菌は、かつては海外で医療を受けた少数の患者に関連する、特殊なものだと考えられていた。しかし、症例数はいまだ少ないものの、近年のアメリカでの発生率は5倍以上に急増したと研究者らは報告している。
エモリー大学の感染症研究者であるデビッド・ワイス氏は、「アメリカにおけるNDMの増加は深刻な危険であり、非常に憂慮すべき事態だ」と電子メールで述べた。
多くの人々がこの薬剤耐性菌の未確認の保菌者である可能性があり、それが市中感染につながる恐れがあるとCDCの科学者らは指摘した。
報告書の著者の一人であるマロヤ・ウォルターズ博士は、尿路感染症のような、これまでありふれたものと考えられてきた感染症の治療がより困難になるかもしれず、そうした事態がアメリカ中の診療所で起こりうると述べた。
薬剤耐性とは、細菌や真菌などの病原体が、それらを殺すために設計された薬を打ち負かす力を獲得したときに発生する。抗生物質の誤用がその増加の大きな原因であった。処方された薬を飲みきらなかったり、不必要な処方が行われたりすることで、病原体を殺しきれずに、かえって強くしてしまったのである。
近年、CDCは広範囲の抗生物質に耐性を持つ「悪夢の細菌」への注意を喚起してきた。これには、重篤な感染症の治療における「最後の砦」と見なされる抗生物質の一種であるカルバペネム系抗生物質も含まれる。
研究者らは、カルバペネム耐性菌の検査と報告を義務付けている29州からデータを収集した。
それらの州から報告された2023年のカルバペネム耐性菌感染症は4341件で、そのうち1831件がNDM型であった。研究者らは、感染者のうち何人が死亡したかについては言及していない。
カルバペネム耐性菌の感染率は、2019年の人口10万人あたり2人弱から2023年には3人以上に上昇し、69%の増加となった。しかし、NDM型の症例率は約0.25人から約1.35人へと上昇し、460%の増加であったと著者らは述べている。
この研究に関与していないある研究者は、この増加は新型コロナウイルスのパンデミックに関連している可能性が高いと述べた。
ワシントン大学の研究者であるジェイソン・バーナム博士は、「パンデミック中に抗生物質の使用が急増したことが知られており、これが薬剤耐性の増加に反映されている可能性が高い」と電子メールで述べた。
CDCが集計した数値は、全体像の一部に過ぎない。
多くの州では、症例の完全な検査と報告が行われていない。実施している州でさえ、症例は特別な検査を必要とするほど重症の入院患者に偏る傾向がある。また、多くの病院では、特定の遺伝子耐性を検出するために必要な検査を実施する能力がない。
CDCの研究者らは、カリフォルニア州、フロリダ州、ニューヨーク州、テキサス州といった人口の多い州の一部のデータを入手できておらず、これはアメリカの感染症の絶対数が「間違いなく過小評価されている」ことを意味すると、バーナム博士は述べた。
この増加を報告したのは、今回の研究が初めてではない。6月に発表されたCDCの報告書では、2019年から2024年にかけてニューヨーク市でNDMの症例が増加したことが指摘されていた。
By MIKE STOBBE AP Medical Writer




