13歳未満のスマホ所有、成人後に自殺リスク増 世界10万人調査
takayuki / Shutterstock.com
13歳未満でスマートフォンを持った若者は、18歳以降の青年期に心の健康に問題を抱える割合が高い――。そんな傾向が、世界各国の18〜24歳を対象とした調査から明らかになった。調査対象は10万人を超え、関連する心理的傾向には「自殺念慮」や「自己肯定感の低下」などが含まれていた。研究者は、子供へのスマートフォン提供に慎重な姿勢を呼びかけている。
◆自殺念慮や攻撃的傾向も
調査は、アメリカの非営利機関「サピエン・ラボ(Sapien Labs)」が主導する「グローバル・マインド・プロジェクト」によって実施され、結果は、国際的な査読付き学術誌「Journal of Human Development and Capabilities(人間開発と能力のジャーナル)」に掲載された。
調査は、世界各国の18〜24歳の若者を対象に、メンタルヘルスとスマートフォン所有年齢との関連を分析。その結果、13歳未満でスマートフォンを所有していた層では、18歳以降において(1)感情のコントロールが難しい(2)自己肯定感の低さ(3)現実感の喪失(4)攻撃的・暴力的な思考(5)自殺念慮――といった傾向が有意に高かったという。
特に顕著なのは、自殺念慮の訴えで、スマホを5〜6歳で持った女性の48%が「自殺を考えた」と回答(9段階評価で7以上)、13歳で所有した層の28%を大きく上回った。男性でも同様に、31%対20%と差があった。さらに、スマホ所有年齢が下がるほどMHQ(メンタルヘルス指標)のスコアは悪化し、13歳時点のスコア30に対し、5歳ではわずか1となった。苦悩または不調と評価された割合は、女性で9.5ポイント、男性で7ポイント上昇していた。
また、女性では自己像や自尊感情、感情の回復力が、男性では共感力や心の安定感が有意に損なわれていることも明らかとなった。
こうした傾向は、文化や言語を超えて世界各地で共通しており、研究者は、13歳未満でのスマートフォン所有が心の発達に深い影響を及ぼしている可能性があると指摘している。
◆ソーシャルメディア、いじめ、睡眠不足が背景に
背景には、スマートフォン所有によって若年層が早期にソーシャルメディアへアクセスする環境があると考えられる。これにより、サイバーいじめに遭うリスクが高まり、さらに夜間の使用による睡眠不足、親とのコミュニケーション不足なども重なって、心の健康に悪影響を及ぼしている可能性があるという。
研究の主導者で神経科学者のタラ・ティアガラジャン氏は、「私たちのデータは、早期のスマートフォン所有が脳の発達と情緒形成に影響を与えていることを示唆している」と語る。
◆制限やルール作り、社会に問う
ティアガラジャン氏らは、心の健康を守るために(1)スマホ使用の段階的制限(2)SNS利用年齢の厳格化と企業責任の強化(3)デジタルリテラシーとメンタルヘルスに関する教育の義務化(4)SNSプラットフォームへのアクセス制限――の4点を政策立案者に提言している。
なお、今回の研究は大規模な相関分析に基づいており、必ずしもスマートフォンが直接的な原因であると断定できるわけではない。今後は、縦断的な追跡調査や心理的介入を含めた研究によって、因果関係の特定が求められるとしている。




