ゼロカロリー甘味料に脳卒中リスクの可能性 米研究が示唆
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エリスリトールという甘味料が、脳の健康に悪影響を及ぼす可能性がある――そんな懸念がアメリカの研究で示された。コロラド大学ボルダー校の研究チームは、エリスリトールが脳の毛細血管内皮細胞に与える影響を調べ、血流を保つために重要な一酸化窒素の産生を低下させ、血管収縮や血栓形成を促す物質を増加させることを発見した。これにより、脳卒中リスクが高まる恐れがあるという。研究内容は、「Journal of Applied Physiology」に掲載されている。
研究では、人間の脳血管細胞をエリスリトールにさらし、活性酸素の増加や、血栓を溶かす作用を持つ酵素の生成阻害などの異常反応が確認された。この甘味料は、一般的にはトウモロコシを発酵させて作られる糖アルコールで、砂糖の代替としてさまざまなブランドの製品に使われている。カロリーはほとんどなく、甘さは砂糖の70~85%程度で、血糖値やインスリンにほぼ影響を与えないことから、減量中の人などの間で人気を集めている。だが今回の研究は、長期的または高頻度での摂取が、血管系に思わぬダメージを与える可能性を示唆している。
この発見は過去の研究とも一致しており、エリスリトールの血中濃度が高い人は、心筋梗塞や脳卒中の発症率が高いことも報告されている。研究チームは、この甘味料が血管の働きを損ない、血流の正常な調節を妨げることで、脳卒中のような疾患につながる可能性があると述べている。
今回の実験では、飲料1本に相当する量(約30グラム)のエリスリトールを用いて細胞への影響を調べたが、研究チームのデソウザ教授は「これはあくまで1回分の摂取量にすぎない」と指摘している。日常的に複数回摂取している場合には、その影響はさらに大きくなる可能性もあるとして、摂取頻度の見直しを呼びかけている。
とはいえ、今回の研究は細胞実験に基づくものであり、人間を対象とした臨床試験ではない。そのため、すぐに日常的な摂取を全面的に避ける必要があるとは言い切れないものの、「ゼロカロリー」や「糖質オフ」といった表示だけで過信せず、摂取の頻度や量に注意を払うべきだという。研究チームは、消費者に対して成分表示のラベルにエリスリトールや「糖アルコール」が記載されていないか注意深く確認するよう呼びかけている。
健康志向の高まりとともに広がってきたエリスリトールなどの甘味料の利用だが、今回の結果はそれらが必ずしも安全ではないことを改めて突きつけるものとなった。今後は、より厳密な安全性評価や臨床データの蓄積が求められるだろう。




