性行為が睡眠改善と翌朝の「やる気」向上に関与 パイロット研究

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 性行為や自慰行為といった性行動が、睡眠の質に好影響を与える可能性があるとする研究結果が発表された。オーストラリアの研究チームが実施したパイロットスタディによれば、パートナーとの性行為や一人での自慰行為を行った夜には、入眠後の覚醒時間が短くなり、睡眠効率が改善される傾向が見られたという。学術誌「スリープ・ヘルス」に論文が掲載された。

 研究には、南オーストラリア在住の同棲中カップル14人(男女各7名)が参加。11日間にわたり、性行動を行わない日、自慰行為を行う日、パートナーと性行為を行う日という3条件を交互に設け、ポータブル脳波計で客観的な睡眠データを取得した。さらに、毎朝の自己申告による日記で睡眠と性行動の主観的評価も記録された。

 結果として、性行動を行った夜には、睡眠中の覚醒時間が有意に短くなり、睡眠効率が向上した。一方で、主観的な睡眠の質や睡眠時間、入眠までの時間には有意な差は見られなかった。性行為や自慰行為を行った夜は、就寝時刻が20〜35分ほど遅くなる傾向があり、これが睡眠時間に影響を与えた可能性も考えられる。

 さらに、パートナーと同じベッドで眠った場合、REM睡眠の同調(いわば睡眠の「シンクロ」)が強まるという結果も得られた。性行動の有無にかかわらず、同じ空間で眠ること自体がこの効果に関係しているようだ。

 興味深いのは、性行動が翌朝の気分にも影響を与えていた点だ。性行為を行った翌朝は、何も行わなかった夜に比べて「やる気」や「準備ができている感覚」が有意に高くなっていた。自慰行動でも同様の傾向があり、やや効果は下がるものの、何も行わなかった夜よりもポジティブな心理状態が報告された。

 性的活動後に分泌されるオキシトシンやプロラクチン、そしてコルチゾールの抑制が、リラックス効果や心理的安定感をもたらしている可能性がある。

 とはいえ、参加者は14人と少数で、健康な若年層に限定されているため、結果を一般化するには慎重さが必要だ。今後は、睡眠障害を持つ人や高齢者など、より幅広い層を対象にした研究が求められる。

 本研究の結果からは、夜の性行動が、睡眠の質や翌朝の気分に関連している可能性が示唆されている。ベッドの上での「活動」は、単なる快楽だけではなく、良い眠りと充実した朝への鍵にもなりうるかもしれない。

Text by 白石千尋