飲酒・喫煙・運動不足の影響、36歳までに心身に現れる 研究
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喫煙や飲酒、運動不足は身体に悪いといわれているが、今すぐ影響が現れるとは誰しも思わないものだ。ところが、30歳前にそうした習慣を身につけた人は、30代後半に影響が現れる可能性があるという最新の研究が発表された。
◆不健康な習慣の影響は36歳から
喫煙や多量飲酒、運動不足といった不健康な生活習慣は、早ければ36歳頃から影響が現れ、その後長年にわたって不健康な状態を引き起こす可能性があることが、フィンランドの新たな研究で明らかになった。研究論文は学術誌「Annals of Medicine」に掲載された。
研究論文によると、世界全体の死亡原因の74%が心臓病やがんなどの非伝染性疾患であり、主な危険因子は健康に有害な影響を及ぼす行動になる。それらには喫煙、アルコールの多量摂取(例えば、女性では純アルコールが週112グラム、男性では週210グラムという推奨限度を超える)、身体活動不足(通常、身体活動ガイドラインを達成していない)が含まれる。
フィンランドのラウレア応用科学大学の研究チームは、喫煙・多量飲酒・運動不足の3つの健康行動が成人初期以降の数十年間にわたる精神的幸福と健康にどのように関連しているかをデータをもとに調査した。
データは、1959年生まれの369人(女性173人、男性196人)を8歳から61歳まで追跡調査して得られたもののなかから、対象者が27歳、36歳、42歳、50歳、61歳の時に収集された自己健康評価と医療データを使用した。
多量飲酒とは、女性が年間7000グラム以上、男性は年間1万グラム以上の純アルコール摂取を指し、運動不足は週1回未満の運動と定義した。
精神的健康は、うつ症状と心理的ウェルビーイングに焦点を当て分析。身体的健康は、血圧、ウエスト周囲径、血糖値、コレステロール、その他の血中脂肪などの因子を組み込んだ代謝リスクを分析した。
◆飲酒はメンタルとフィジカルの両方に影響か
被験者の喫煙者の割合は、27歳時のほぼ半数から、61歳時には5分の1以下に減少。多量のアルコール摂取は横断的に増加した一方、運動不足の割合は経時的に減少した。抑うつ症状と精神的幸福感については、年齢間で統計的に有意な差はみられなかったが、自己評価による健康状態は、若い年齢層で高かった。代謝危険リスクの数は時間の経過とともに増加した。
データ分析の結果、運動不足は特に身体的健康の低下、喫煙は主に精神的健康の低下、アルコール多量摂取は精神的・身体的健康の両方の低下と関連していた。
より多くの健康リスク行動を行い、それを長く続けている人ほど、心臓疾患リスクやうつ病など精神面のリスクへの影響が大きいことが分かった。
そして、重要なのは、30歳前にそうした健康行動を始めた場合、その影響は早ければ30代半ばまでに現れていたことが分かったことだった。この論文の筆頭執筆者のティア・ケカライネン保健学博士によれば、こうした健康リスク行動のある人は、36歳の時点ですでに健康状態が悪くなっていたという。
中年期の有害な健康行動は、老年期の好ましくない健康状態と以前から関連付けられていたが、成人早期前からそうした関連性があることを指摘。さらに、有害な健康行動が合わさると、その影響は累積し、さらに、これらの行動が健康に及ぼす影響は、生涯を通じて蓄積される可能性があるとした。
◆健康状態が行動習慣のきっかけにも
研究チームは、こうした健康行動が健康に影響を与えるだけでなく、逆の場合も考えられ、行動と健康はおそらく双方向の関係にあると指摘した。たとえば、うつ病や身体的な問題が飲酒、喫煙、運動不足を招く可能性があるとした。また、この結果は1950年代後半から60年代前半に生まれた人々に最も当てはまるが、異なる健康リスク行動のある若い世代には必ずしも当てはまらない可能性があると補足した。
研究に関わったケカライネン博士は「心臓病やがんなどの非伝染性疾患は、世界中で死因のほぼ4分の3を占めている」とする。「しかし、健康的なライフスタイルを送ることで、これらの病気にかかるリスクを減らし、早死にする確率を減らすことができる。喫煙、多量飲酒、運動不足といったリスクの高い健康行動をできるだけ早い段階で予防することが重要になる」と述べた。




