精子の質が高い男性ほど長生き 研究

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 男性の精子と寿命との関係がデンマークの大規模調査で明らかになった。精子が活発な性質を持つ男性は約3年長生きするというのだが、重要なのは、健康状態を示すバロメーターになるというのだ。

◆活発な精子と長生きの意外な関係
 男性の精子の質と寿命との間に重要な関係があることが、学術誌「ヒューマン・リプロダクション」に3月5日に発表された新たな研究成果で分かった。

 デンマーク・コペンハーゲンで1965年から2015年までの間に不妊検査を受けた男性約7万8000人から採取された精子のサンプルの質(精液の量、精子濃度、精子運動率・正常形態率)を比較、さらに、デンマーク保険当局が収集した国の医療記録とも比較し、追跡調査が実施された。

 その結果、精子の運動率(精子細胞が効率よく動き、泳ぐ能力)が高い男性は、精液の質が悪い男性よりも2.7年長生きする可能性があるという。総運動精子数が1ミリリットル当たり1億2000万個を超える男性の平均寿命は80.3歳で、0〜500万個の男性の平均寿命は77.6年だった。

 コペンハーゲン大学病院の上級研究員で、この研究の筆頭著者であるレルケ・プリスコーン博士は声明の中で、「精液の質が低ければ低いほど、平均余命は短くなる。この結果は、研究開始前の10年間の病歴や男性の教育水準では説明できないものだった」と述べる

◆精子の質 健康状態を示すバロメーターに
 この研究は、男性の生殖機能の健康が、全体的な健康と寿命を左右する重要な手がかりになることも示唆している。

 死滅した精子を多く持つ男性は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染しやすい可能性があるとされる(CNN)。HPVは、中咽頭がん、陰茎がん、肛門がん、尖圭(せんけい)コンジローマの原因となる。

 オーストラリアのニューカッスル大学環境生命科学部の名誉教授であるジョン・エイトケン氏は同論文の巻頭辞に「男性において、将来の健康とウェルビーイングに関する最も重要な情報を提供しているのは、精液の質の可能性がある」と見解を示した。

 エイトケンによれば、この関連性を説明する一つの答えは、フリーラジカルが過剰に発生したときに増加する酸化ストレスかもしれないという。フリーラジカルは不安定な分子で、DNAや細胞機能にダメージを与え、精巣や精子を含む全身の細胞死につながる。

 「酸化ストレスの全体的なレベルを高めるあらゆる要因(遺伝的、免疫学的、代謝的、環境的、生活習慣的)によって、精液のプロファイルや、その後の死亡パターンが変化する可能性がある」と述べる(CNN)。

 また、エイトケン氏は、医療従事者は精子の質が低い男性にその旨を伝え、十分な健康診断を受けるよう勧めるべきだ、と指摘する(ベストライフ・オンライン)。

 ユーロニュースによると、専門家のなかには、身体の基本的機能を測定する際の項目である、体温、心拍数、呼吸数、血圧、酸素飽和度に加えて、精液の質を第6番目として考慮するよう求める者もいるという。

Text by 中沢弘子