「サマービル幽霊」の正体、科学者が解明へ 60年代から廃線で謎の光や異音
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アメリカのある地方部で謎の発光現象が長年続き、幽霊の仕業ではないかとまことしやかに囁かれてきた。だが、最新の仮説によると、この現象には科学的な説明がつくという。
◆火の玉にささやき声 怪奇現象相次ぐ
アメリカ南東部サウスカロライナ州で、正体不明の発光現象が観察されている。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、現場はチャールストン近郊の町・サマービルの森の中だ。廃線となった鉄道が砂道として残っており、ここで青や緑、オレンジ色といった光が出現するという。
光は主に夜間に目撃されており、上下に揺れ動きながらまるで脈動するかのように輝くのが特徴だ。現地では「サマービル・ライト」と呼ばれており、現場付近では1960年代から多くの人々が発光球体を目撃したり、異常な音を耳にしたりしてきた。
英タイムズ紙が報じる目撃証言によれば、かつて線路があったこの場所で、発光以外にも車両が激しく揺れたり、何者かの囁き声が聞こえたりといった情報が寄せられている。付近の家では、誰もいない2階から物音がする場合もあるという。
また、幽霊のような姿が目撃されるなど、複数の異常現象が繰り返し報告されている。こうした目撃情報は長年にわたり、絶えず発生してきた。
◆地元の伝説では「女性の幽霊」
チャールストンの現場には、古くから語り継がれる悲しい物語がある。ニューヨーク・タイムズ紙が取り上げている伝承によると、この古い線路沿いにはかつて、鉄道作業員の夫の帰りを待つ女性がいたという。
言い伝えによると、夫は事故で首を失い命を落とした。妻は夫の遺体を探し続け、自身が死を迎えた後も幽霊となってランタンを手に探索を続けているという。今も目撃される光の正体は、この未亡人の持つランタンの明かりだと考える地元の人々もいる。
タイムズ紙もこの伝承を取り上げている。地元では発光現象について、亡き夫の遺体を探し続ける未亡人の幽霊が手にしたランタンの明かりだ、との説が定着しているという。言い伝えはこの地域で、代々受け継がれてきた。
◆一貫した説明がつく、と科学者が提言
だが、この現象には科学的な説明がつくと、米地質調査所の地震学者であるスーザン・ハウ博士は考えている。米サイエンス誌(1月27日)によると、科学ジャーナル『セイスモロジカル・リサーチ・レターズ』に寄せた論文でハウ氏は、「車が激しく揺れる現象は、地震学者から見れば明らかに、浅い地震の特徴を示している」と指摘している。
ハウ氏によると、家の2階からの物音や囁き、ドアの揺れといった現象は、微小な地震活動によって引き起こされたものである可能性が高いという。
発光の仕組みについて、ハウ氏は日本の信州大学の榎本祐嗣教授の研究成果を引用し、地震で放出されるメタンガスが、地震活動による摩擦で発生した静電気により発火し、青やオレンジ色の光を放っている可能性があると指摘した。また、現地には線路の鉄鋼材が一部放置されており、こうした資材同士の摩擦により火花が散っている可能性もあるという。
今後ハウ博士は、さらに詳細な現地調査を実施する意向だ。今後の共同研究により、長年の謎に科学的な説明が加えられる可能性が出てきた。