プラ容器から有害物質 心不全リスク最大30%上昇 最新研究
AntAlexStudio / Shutterstock.com
テイクアウトや惣菜販売などで、プラスチック製容器は便利に利用されている。しかし、こうしたプラ容器から化学物質が溶け出し、人体の心血管系に影響を与えている恐れがある。中国の研究グループが疫学調査と動物実験による検証を行ったところ、プラ容器をよく使う人はそうでない人に比べ、心不全のリスクが最大30%高いことが判明したという。
◆3000人対象の大規模な疫学調査
研究グループは、3179人を対象に疫学調査を実施した。標準化された質問票を用いて、日常生活でのプラスチック製品の使用頻度や、心血管疾患の有無などを詳しく調べた。研究結果が昨年12月、生態毒性学と環境安全性の学術誌『エコトキシコロジー&エンバイロンメンタル・セーフティ』に掲載された。
プラスチック製品を日常的に使用することで、人体の心血管系にどのような影響が及ぶのか。研究論文によると、疫学調査の結果、プラスチック製品を頻繁に使用する人々は、心不全を発症するリスクが1.13倍に高まることが判明したという。
調査ではさらに、この危険性が特定の層でより顕著になることも分かった。73歳以上の高齢者では心不全のリスクが1.18倍、女性では1.14倍に上昇していた。都市部に住む人々グループは1.30倍と、最も高い数値を示した。
◆ラットを使った実験でも有害性を確認
これとは別に研究では、動物実験を実施している。実験は実験動物の福祉基準に配慮し、中国寧夏回族自治区にある寧夏医科大学で実施された。
ラット32匹を4グループに分け、使い捨てプラ容器に沸騰水を1分間、5分間、15分間入れて得られた溶出液を3ヶ月間与え、影響を観察した。残りの1グループにはプラ容器の水を与えなかった。
データ収集にあたっては、ラットそれぞれに専用の代謝ケージを用意し、個別に糞便を採取してマイナス80度で保存している。実験最終日には、エーテル麻酔下でラットを安楽死させ、腹部大動脈からの採血とともに、心臓組織の詳細な観察および生化学的分析を行った。
◆高温の食材と接触すると危険
ラットを使った実験では、わずか1分間の接触した水を摂取したグループでも心筋組織に異常が現れ、炎症の兆候や出血が見つかった。プラ容器との接触時間が5分、15分と長くなるにつれ、心筋の構造はさらに大きく損なわれていったという。
電子顕微鏡による観察では、さらに深刻な事実が浮かび上がった。体内でエネルギーを作り出す重要な器官であるミトコンドリアには、1分間の接触ですでに異常な膨らみが見られた。5分間では内部に空洞ができ始め、15分間の接触では取り返しのつかない損傷を受けることが確認された。
研究グループは、「高温の食品をプラスチック容器で提供することは避け、日常生活におけるプラスチック製品の使用を減らし、プラスチック汚染対策を適時実施することが不可欠である」と述べている。
提供前に高温の状態でプラ容器に盛り付けられている場合は対策が難しいが、家庭のレンジでの再加熱する際、セラミックの皿に移すなどの対策は取れそうだ。