輪廻転生を示唆? 「前世の記憶」を語り出す子供たち

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 幼稚園児ほどの年齢の子供が、前世の記憶を語ることがある。果たしてそれは本当に過去から引き継がれた記憶なのか。2000件以上の事例が分析されているが、解明は難航している。

◆「腕に悲しい数字がある」と語る少女
 前世の記憶を持つ子供たちの事例は、世界のさまざまな国で報告されている。米ワシントン・ポスト紙(2024年5月2日)は、2歳の少女アイヤの体験を詳細に報じている。アイヤの母親マリーは、娘が「ニーナ」という人物を名乗り語り始めたと振り返る。
 
 アイヤは「ニーナの腕には数字があり、それは悲しいものだ」と述べ、ナチス・ドイツの強制収容所での出来事を示唆した。ナチス・ドイツによるユダヤ人大量虐殺であるホロコーストでは、収容所の囚人の腕に番号が刻まれており、それを想起させる発言だった。

 また、アイヤは「ニーナ」として話す際、声が高く優しくなり、普段の活発な性格とは違う様子を見せたという。娘がホロコーストについて知る機会は一切なかったと、マリーは困惑を隠せなかった。
 
 別の事例では、同紙によると、2000年にルイジアナ州で2歳のジェームズ・ライニンガーが夜中に「飛行機が炎上!小さな男が出られない!」と叫び続ける事例が発生している。その後、第二次世界大戦で日本軍に撃墜されたパイロットとしての具体的な記憶を語り始めたという。

◆6歳児が遠いイスタンブールでの暮らしを回想
 カナダの主要全国紙グローブ・アンド・メール(1月31日)は、1997年にトルコで確認された、イニシャル「KA」の名で知られる6歳児の事例を取り上げている。KAは、自宅から850キロ離れたイスタンブールでの過去の生活を詳細に語り、カラカス家というアルメニア人キリスト教徒としての記憶を持っていた。この証言は後に地元の歴史家によって裏付けられている。
 
 同紙はまた、アンジェラ・グラブスの事例も報じている。グラブスは夢の中で、1923年に死亡した看護師フランシーヌ・ドノバンの生涯を回想したという。その内容には一貫性があった。

 バージニア大学医学部精神医学・神経行動科学科で前世の記憶研究を統括するタッカー博士は、ワシントン・ポスト紙の取材に対し、「こうした現象は2歳から6歳の子供に多く見られ、7、8歳までに記憶は薄れていく傾向がある」と説明している。

◆70%に一定の整合性が認められるが…
 グローブ・アンド・メール紙は、前世の記憶には「自発的な記憶」と、「催眠などで引き出された記憶」の2種類が存在すると述べる。いずれも、科学的な真偽の検証は困難だ。神経行動科学科の創設者であるスティーブンソン博士は、これらの事例は輪廻転生を「示唆するものに過ぎない」とし、「完全な証明には至っていない」と述べている。
 
 米バージニア州の公共ラジオ局WVTFによると、1967年に設立された同部門は、これまでに2200件以上の事例を収集・分析している。このうち約70%の事例で過去の実在の人物や出来事との関連が確認されているものの、それらが前世の記憶であると結論は得られていないという。

Text by 青葉やまと