21日ではなかった…新しい習慣が身につく日数、新研究で判明
sutadimages / Shutterstock.com
今年こそ週3回運動する、あるいは飲酒を控える、資格取得の勉強をするなど、新しい生活習慣を身につけようと多くの人が目標を立てたことだろう。こうした習慣を定着させるには、約3週間必要になると一般的に言われている。ところが、最新の研究でこの通説は科学的な根拠のないことが分かった。
◆習慣化に約2ヶ月必要
新しい習慣を身につけるまでに3週間かかるという通説は、実際かなりずれている。南オーストラリア大学(UniSA)の研究によると、健康的な習慣を定着させるには2ヶ月から1年かかることが分かった。しかし、日数にかかわらず、習慣形成の仕組みを理解すれば、生涯にわたって健康習慣を維持することができるという。
国際的なヘルスケア学術誌「ヘルスケア」に掲載された研究では、新しい健康的な習慣を形成するのにかかる時間の中央値は59〜66日で、長い場合では335日かかるとした。
研究者たちは、2008年から23年の間に発表され、21歳から73歳までの2600人以上が参加した20の先行研究のメタ分析を行った結果、この結論に達した。これらの研究では、健康的な習慣が形成されるまでにかかる時間の全体的な傾向を見つけることを目的として、習慣的な行動を測定した。
測定項目は、毎日のストレッチなどの身体活動、水分摂取量の増加、ビタミンの摂取、フロスの使用、健康的な食生活などの健康習慣が対象となった。その結果、健康的な食事、飲酒、運動習慣を維持するには約66日かかり、毎日の朝のストレッチには約106日、夜のストレッチには約154日かかった。
UniSAの「Allied Health & Human Performance」研究員で、この研究の共著者であるベン・シン博士は、健康的な習慣を形成するのにかかる時間は人それぞれであり、その習慣が何であるかによって異なると強調した(CNN、1/27)。
「簡単な習慣、たとえば毎日フロスをするようになるには1週間かかることもあるが、さらに複雑な習慣、たとえば食生活や身体的活動を変えるにはもっと長い時間かかる可能性がある」と説明する(同)。
◆21日神話はこうして誕生した
シン博士は「新年の初めに、多くの人がこの1年はもっと活動的になる、砂糖を控える、健康に良い食べ物を選ぶといった目標や計画を立てるが、こういう習慣を形成するのに21日かかるというのが定説だ。しかし、この主張は何ら科学的な根拠はない」と指摘。「つまり、より健康的な習慣を身につけたいと願っている人々にとって、神話のような3週間という期間であきらめないことが大切だ」と述べる。
氏によると、21日神話は1960年に出版された形成外科医マクスウェル・モルツ氏の著書『サイコ・サイバネティクス』が発端になっているという。その中で著者は、患者が術後の新しい外見に慣れるまでに通常約21日かかったことを観察したと記述している。
◆習慣化のための有効な方法は
研究では、特定の要因が習慣形成の成功に影響することも分かった。シン博士は「新しい健康習慣を確立しようとする場合、成功するかどうかは、新しい活動を行う頻度、実践するタイミング、それを楽しめるかどうかなど、さまざまなことに影響される」と指摘する。
「もしより健康的な食事や運動を始めたいのであれば、そうした新しい習慣を一日の後半に取り入れようとするよりも、朝に取り入れた方が効果的な傾向がある」と述べる(CNN)
「新しい習慣が楽しいものであれば、それを継続できる可能性も高くなる」と指摘。さらに、「新しい行動を計画し、実行しようと意図することは、新しい習慣を定着させることにもつながるので、毎日の行動に新しい健康習慣を取り入れる時間を作り続けることが大切だ。朝のウォーキングの前夜にジムの着替えを用意しておくとか、冷蔵庫にヘルシーなランチを用意しておくといった簡単なことでいい」とした。
「習慣を身につけるための戦略を一日の中に組み入れ、それを達成するための計画を立てることで、成功に近づくことができるはずだ」と述べる。
◆慢性疾患の予防にも
イギリス・サリー大学の「習慣応用・理論」グループのディレクター、ベンジャミン・ガードナー博士は、この研究結果は慎重に解釈されるべきであると示唆した。「『習慣がある』か『習慣がない』かのどちらかであるという考え方には注意が必要になる。なぜなら、習慣は時間とともに強くなっていくものであり、『完全に形成された』という地点に到達するものではないからだ」。また、習慣を形成する最良の方法は、定期的に直面する状況を特定し、その状況に直面するたびに自ら選択した行動を取ることだという。(CNN)。
シン博士は、「研究は、多くの短期的な研究を基にしている。たとえば、12週間後に習慣を変え、行動を改善した人がいたとして、その人は12ヶ月後もその行動を継続しているかどうかについては、長期的な研究が必要になる」と指摘する(CNN)。
研究者たちは、これらの知見は、公衆衛生の取り組みや、持続的で健康的な行動変容をサポートする個人別のプログラムを構築するうえで指針になると述べているという。