「恐竜はどこから来たのか」に新説 定説より古く、場所も違う可能性

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 イギリスの名門研究機関・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームが、恐竜の起源に関する従来の定説を覆す新たな研究結果を発表した。恐竜の起源は現在の定説より古く、場所も異なる可能性があるという。

◆化石未発見地域の扱いを改める
 これまで最古の恐竜の化石として、約2億3000万年前のものがブラジル、アルゼンチン、ジンバブエなどで発見されていた。しかし、化石の特徴に違いが大きいことから、さらに数百万年前から恐竜が進化を始めていた可能性があるとの見方も存在した。今回の研究は、その起源がさらに古く、より北方の赤道地域にある可能性を示唆するものとなる。

 研究手法としてチームは、化石がいまだ発見されていない場所を「恐竜が存在しなかった場所」として扱うのではなく、アクセス困難などの事情により「データが現時点では欠落している場所」と考える新たなモデル分析を実施した。

 また、生物学的な「近さ」を系統的に示す進化系統樹に加え、恐竜とその近縁種の化石データ、当時の地理的特徴を組み合わせた新たなモデル分析を実施した。結果、最古の恐竜は現在のアマゾン、コンゴ盆地、サハラ砂漠を含む地域にあたる超大陸ゴンドワナの赤道地域で誕生した可能性が高いことが判明した。

◆低緯度地域で誕生した可能性
 モデル分析から、恐竜とその他の爬虫類は低緯度のゴンドワナ地域で誕生し、その後、南部ゴンドワナや北部の超大陸ローラシア(現在のヨーロッパ、アジア、北米大陸)へと分布を広げていったことが示された。研究結果は1月23日付で査読付き科学ジャーナル「カレント・バイオロジー」に掲載された。

 論文の筆頭著者であるUCL研究生のジョエル・ヒース氏(古生物学)は、「最古の恐竜は、これまで考えられていたよりも暑く乾燥した、砂漠やサバンナのような環境で誕生した可能性があります」と説明している

 ヒース氏はまた、ニュー・サイエンティスト誌の取材に対し、「恐竜たちは赤道地域を横断していたはずです」との考えを示した。

◆体温を調節できた恐竜はより遠方へ
 UCL地球科学部のフィリップ・マニオン教授は、「初期の恐竜は、暑く乾燥した環境に適応していました」との見解を示している。

 「三大恐竜グループに、長い首と尾を持ち、体重が数十トンに達する草食恐竜である竜脚類があります。ブロントサウルスやディプロドクスに代表されるこれら竜脚類は、温暖な気候を好み、地球の低緯度地域にとどまる傾向がありました」

 肉食恐竜の獣脚類と植物食の鳥脚類については、ジュラ紀に入って体温調節能力を獲得し、極地を含むより寒冷な地域でも生息できるようになったという。

 データの空白域の扱いを変更することで、恐竜の発祥にまつわる見方は大きく変化した。

Text by 青葉やまと