戦時下で日本語を学ぶウクライナの学生たち 続く非日常、友人らの死
◆空襲警報による睡眠不足
授業形式は対面となったが、学習環境は元通りとは程遠い。一番身近な問題は何といっても空襲警報による睡眠不足だ。インタビューに答える学生たちもみな一様に、空襲警報で授業が中断されることが多いこと、また夜や早朝の空襲警報のせいで十分に寝ていない状態での授業や試験は集中力が持たずつらいことに言及している。
オリハさんによれば、攻撃や警報には決まったパターンはないが、夜間は比較的多いという。なぜなら「夜間のドローン攻撃は暗闇で迎撃が難しい」からだ。また、「発電所や変電所が被害を受けると(中略)民間人への影響がより大きく」多くの人が苦しむことになるため、エネルギー需要の多い寒冷期や、逆に猛暑の時期も攻撃が増加しやすいという。
オリハさんが帰省していた6月は比較的攻撃の少ない時期だったが、彼女の住む田舎(キーウ市からバスと車で2時間15分)でも、空襲警報が1日に2、3回鳴るのはしょっちゅうで、それ以上出る日もあったという。警報は30分程度で解除されることもある一方、ミサイル攻撃があれば何時間も続き、住民らはその間、ミサイルの音や鳴り続ける警報にさらされた。オリハさんは一例として「夜通しドローンが撃墜される音を聞き、翌朝には隣町でエネルギーインフラ施設が大規模な火災に見舞われた」夜があったことを語ってくれた。
◆警報で中断される授業
ウクライナの空襲警報の発令履歴、頻度、継続時間を確認できる情報サイトによると、11月最後の10日間(11/21~30)で、キーウ市内には空襲警報が18回出されている。そのうち30分以上警報が持続したのは12回。最長は9時間26分と、前夜から翌朝まで続いている。
10日間で出た空襲警報のうち、夜間や早朝など、通常人が寝ている時間に出たものは10回だ。空襲警報中は防空施設への避難が推奨されている。だが、実際に警報ごとに避難していては、健康の維持が不可能であるため、窓のない部屋への移動程度で済ませる人も少なくないという。それでも騒音や不安は大きく、睡眠不足は切実な問題だ。
一方、同期間に出された日中の空襲警報は7回。こちらは比較的短く1時間未満で解除されてはいるが、これが大学での授業中であった場合は、教師も学生も必ずみな地下壕(ごう)に避難することになる。地下には小部屋もあるが、半地下で窓がついていて危険なので、避難するときはみな廊下部分に待機する。廊下にはベンチを置き、一応座れるようにはしているが、授業を続けられる環境ではない。前述の江川氏は避難中は課題を与えて自習させているそうだ。ただ一部には、なんとか区切りの良いところまでと、地下避難中に授業の続きを行う同僚もいるという。
通学中など外にいるときに空襲警報が出た場合は、たとえばバスであれば、最寄りの避難所に向かい乗客は警報が解除されるまでそこにとどまるように求められるという。その間、地下鉄以外の公共交通機関はすべて運休となる。地下鉄の駅は避難所としても利用される。