戦時下で日本語を学ぶウクライナの学生たち 続く非日常、友人らの死
2022年2月にロシアがウクライナ全土への侵略を開始してすでに2年9ヶ月が過ぎた。戦いが長引いている今、戦時下におけるキーウの学生生活を通して、この異常な状況をもう一度再確認したい。
◆キーウ大学レポート動画
ウクライナ出身パーダルカ・オリハさんは2023年、東京の文化放送に採用され、取材活動や広報業務のほか、ポッドキャスト番組『オリハの今まで知らなかったウクライナ』やユーチューブでウクライナに関する情報発信に従事している。そのオリハさんが2024年夏、ウクライナに一時帰国した際、キーウ大学の学生たちにインタビューした動画『キーウ国立大学への訪問:戦争下での学びとは?』をユーチューブで公開した。
オリハさんの母校であるキーウ大学の正式名称はタラス・シェフチェンコ記念キーウ国立大学。19世紀前半に創立された教育機関で、ウクライナの高等教育機関のリーダー的存在だ。日本でいえば東京大学のような位置づけにあたる。動画の中でインタビューに応えているのは、オリハさんの後輩となる極東・東南アジア言語文学学科で日本語、日本文学および通翻訳を専攻する学生たちだ。
◆「非日常」が「日常」となった日々
今回オリハさんは東京からキーウ郊外の実家まで片道52時間かけて移動したという。成田から北京経由でポーランドの首都ワルシャワまでは空路。ウクライナ上空は民間機は飛行していないため、その後はバスでリビウを経由してキーウまで約17時間。キーウ中央駅には夜中近くに到着したものの、0時から5時まで夜間外出禁止令が出ているため、そのままバスの中で待機。朝の5時を待ってさらに地方バスと車を乗り継ぎ、キーウ郊外の田舎にある実家へたどり着いている。丸2日以上かかる長い移動時間一つを取っても、ウクライナが置かれている特殊な状況を感じずにはいられない。
だからこそ、オリハさんの大学レポート動画を見ると、一見戦争中には見えない和やかさに目を見張る。夏の良い気候の中、19世紀に建てられた重厚な校舎の薄い黄色の外壁が映え、リンゴの木が並ぶ緑豊かな中庭で、いくぶん照れながら、けれどもにこやかに日本語でインタビューに応える学生たちはリラックスしてさえ見える。だが、インタビューが進むにつれ、彼らの日常はやはり通常下ではありえない「非日常」に満ちていることが見えてくる。
◆オンライン授業から対面式授業へ
ウクライナでは、2022年2月24日のロシアによるウクライナ本土侵略が始まった後、学校のカリキュラムはどこも一時停止され、休校などの措置が取られた。疎開などの動きもあり、しばらく混乱の時期を経た後、地域や状況により、オンラインと対面式を組み合わせたハイブリッド形式で授業が続けられ、徐々に対面式へ移行。
その間、オンタイムでオンライン授業に参加できない環境にある学生のために、オンライン授業の録画配信なども行っていた。キーウ大学日本語学科で教鞭(きょうべん)をとる江川裕之氏によれば、今学年度の始まりである9月からは全学年で原則対面授業になったという。