極右と極左はだまされやすい、ネットの誤情報 米研究

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 インターネットは誤情報の宝庫といわれている。誤情報を信じやすい人はどういう政治的信条を持つのか。ニューヨーク大学がそれをテーマに研究を行い、結果を発表した。

◆極左派・極右派が信じやすい
 ニューヨーク大学ソーシャルメディア政治センター(CSMaP)によると、保守・リベラルを問わず極端な政治的信条を持つ人々は、オンラインで誤情報が拡散した時点で最初にそれを見て信じ込む可能性がほかの人々よりもより高いことが最新の研究で分かった。研究結果は科学系学術誌「PNASネクサス」に掲載された。

 研究者らは、ツイッター(現X)に投稿された記事が投稿された瞬間からどのように拡散されたかを調べ、プロ向けのファクトチェッカーを使って、記事の信憑性(しんぴょうせい)を立証した。

 その際、研究者らが開発した、特定のニュース記事に接したユーザー数だけでなく、それを信じる可能性のあるユーザー数も推定する新しい方法を応用した。

 現行の方法では、閲覧数や共有数を測定するだけで、ユーザーが実際にその誤情報を信じるかどうか測定ができないためだ。

 研究者らは、左派・右派の主流出版物、低品質出版物、イデオロギーの傾きが不明の低品質出版物の5種類のニュースストリームから139本の人気記事(2019年11月~2020年2月)を抽出した。

 各記事は掲載後48時間以内にプロのファクトチェッカー・チームに送られ、ファクトチェッカーを使って各記事を「真実」か「虚偽/誤解を招く」かで評価した。うち102本が真実、37本が虚偽と評価された。

 研究者らはこれらの記事がツイッターに投稿された時点でどのくらい拡散されたかを割り出した。また、それぞれの記事にアクセスした可能性のあるツイッターのユーザーを特定し、彼らのイデオロギー的立ち位置を推定した。

 その結果、フェイクニュースは幅広い政治的信条を持つユーザーに届いているが、より極端な政治的信条を持つユーザーがそれを見て信じる可能性が高いことが判明した。さらにこのようなユーザーは拡散の早い時点で、その記事を目にする傾向があることも分かった。

 同研究の筆頭著者のトキタ・サンダーソン氏は「誤情報はソーシャルメディアにおいて深刻な問題だが、その影響力は一様ではない」と指摘する。

◆誤情報を阻止する有効な手立てとは
 研究者らはまた、誤情報の拡散を止める方法として、さまざまな介入方法による影響力も測定した。

 その結果、誤情報の拡散に対抗する現在の方法は実行不可能である可能性が高いこと、そのため最も有効な方法は、虚偽の影響を最も受けやすいユーザーに的を絞り、拡散の早い段階で介入策を迅速に実施することだという。

 CSMaPの専務理事のジーブ・サンダーソン氏は「極端な政治的信条を持つユーザーは早い段階で誤情報を目にする傾向にあるため、(略)現行のさまざまなソーシャルメディアの介入法は、誤情報を信じやすい人々が誤情報にさらされることに対して素早く対応できていない」と述べる。

 現在テック業界でデータサイエンティストとして働くトキタ氏は「オンライン上の誤情報を阻止するより有効な方法を構築する鍵となるのは、誤情報にアクセスする人々を特定するだけでなく、誤情報を信じやすい人々を把握することだ」とアドバイスする。

 一方、プリンストン大学とユタ大学の研究によると、「自分は誤情報を見抜くのが得意だ」と考えている人ほど、誤情報にだまされる傾向があることが判明している。アメリカ人の約5人に1人は、自分の誤情報を見抜く能力を、実際のスコアよりも50パーセント以上高く評価しているという。ユタ大学のコミュニケーション学のベン・ライオンズ助教授は「多くの人々は、自分が誤情報に対してどれだけ脆弱であるかに気づいていない」と指摘する(フォーブス誌、10/1)。

Text by 中沢弘子