カップケーキ1000個の注文に喜んでいたら… 巧妙な詐欺の標的にされたLAの菓子店

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 米カリフォルニア州ロサンゼルスのベーカリーに、カップケーキ1000個の大量注文が舞い込んだ。しかし店は、偽造小切手を使った詐欺事件のターゲットとなっていた。同じ被害に遭ったとの申し立てが、ほかにも少なくとも14件寄せられている。

◆街のベーカリーに舞い込んだ大量注文
 イート・ユア・フラワーズは、ロサンゼルスのハイランドパークにあるベーカリーだ。店主のロリア・スターンさんは、もう12年間も地道に営業を続けてきた。食用花を生地に織り込んだ、ユニークなクッキーやケーキを作っている。

 彼女のもとに8月初旬、ゾーイ・マディソンと名乗る人物から、1000個のカップケーキの注文依頼メールが届いた。クッキーで有名な店だったので少し奇妙に思ったが、大量の注文に興奮したという。米CW系列のロサンゼルス局KTLAによると、この人物はクレジットカードやモバイル決済アプリでの支払いは行えないと告げ、代わりに7500ドル(約108万円)の小切手を郵送してきた。

 スターンさんは当初不審に思ったが、銀行に相談したところ、資金が移動できたなら小切手は有効である、との返答を受けたという。米ABC7によると小切手は問題なく現金化できたため、スターンさんは安心した。得た金額の一部を使って材料を購入し、カップケーキの製造を始めた。

◆突然の変更要求に戸惑う
 だが、店がカップケーキの製造で忙しくなるなか、注文者から再度連絡があった。ABC7によると、予算の都合で注文数を半分に減らしたいので、差額を返金してほしいとの要請だった。しかし、スターンさんはすでに材料を購入し、製造を進めている。注文の変更はできないと返信した。

 翌日、スターンの口座から小切手で手にしたはずの7500ドルが、小切手の払い出し元へと組み戻された。スターンさんはKTLAの取材に、「(銀行からは)偽小切手として指摘されました」と振り返る。

 ABC7によると、スターンさんは事の真相を突き止めるため、小切手に記載されていた会社に連絡した。すると、同様の被害を受けた小規模事業者は多数おり、彼女で15件目だと告げられたという。

◆偽造小切手を使った手口だった
 この事件は、偽造小切手による詐欺未遂事件とみられる。犯人は実在する会社の小切手を偽造し、スターンさんの店へ送った。仮にスターンさんが注文数の変更に応じ、現金または振り込みで犯人に返金していれば、犯人側は元手なしで返金額分を手にできていた目算だ。今回はスターンさんが返金を拒否しているため、犯人は何も手にせず、スターンさんが材料費の損害を受けた形に終わった。

 金融情報サイトの米マネーワイズは、今回の事件を受け、いくつかの注意点を紹介している。大口注文の場合は特に、小切手での支払いは返金のリスクが高いという。また、注文内容が通常のパターンと大きく異なる場合、詐欺であることを疑うことが肝要だという。

 スターンさんは銀行のお墨付きを得たと思ったが、銀行としては「小切手が真正である限り、資金は移動できる」との意図だったという。スターンさんはABC7に対し、「本当に、人間不信になりそうな出来事でした」と語っている。

Text by 青葉やまと