老化は44歳と60歳の2回、急激に起きる 研究
人は加齢とともに老化していく、というのが一般的な説だ。だが、実はある年齢に差しかかると、急激に老化するという新説が発表された。米スタンフォード大学医学部が発表した研究成果によると、その年齢は44歳と60歳前半だという。
◆44歳と60歳で急激に老化
スタンフォード大学医学部の新しい研究によると、人は年齢とともに老化するのではなく、少なくとも平均44歳と60歳の2回、急激に老化することがわかった。
スタンフォード大学とシンガポールの南洋理工大学の科学者たちは、25歳から75歳までの被験者108人の何千種類もの分子と、マイクロバイオーム(私たちの体内や皮膚に生息する細菌、ウイルス、真菌類)の老化の変化を、中央値1.7年にわたって追跡調査した。
その結果、体内の分子や微生物は徐々に変化するわけではなく、むしろ平均44歳と60歳の2回、急激に増減することがわかった。つまり、人間の老化は年齢とともに徐々に直線的に起こるものではないという。
この研究は8月14日付の学術誌ネイチャー・エイジングに掲載された。
南洋理工大学マイクロバイオーム医学助教授で、この研究論文の筆頭著者であるシャオタオ・シェン氏はCNNの取材に対し、「私たちは徐々に老いていくのではないことがわかった」とし、老化と健康にとって特に重要なのはある特定の年齢だと語る。
◆40代でアルコールとカフェインの代謝低下
たとえば、40代ではアルコール、カフェイン、脂質代謝、心血管疾患、皮膚と筋肉に関連する分子の数に有意な変化が見られ、60代では炭水化物とカフェインの代謝、免疫調節、腎機能、心血管疾患、皮膚と筋肉に関連した変化が見られた。こうした変化は健康に影響を与える可能性が高い。
特に40代半ばの被験者に、心血管疾患や脂質、アルコール代謝に関連する分子に変化が見られたことから、この年齢に達すると体内でのアルコールや脂質の分解効率が低下することが示唆された。カフェインを代謝する能力は、40歳前後で顕著に低下し、60歳前後で再び低下する。また、60代前半では、免疫調節に「急激な低下」が見られ、病気にかかりやすくなる理由の説明につながる可能性がある。この研究では、60歳以上の人は、心血管障害、腎臓病、2型糖尿病にかかりやすいことがわかった。
論文の上席著者でスタンフォード大学遺伝学部学長のマイケル・スナイダー氏は、「(脂質代謝に関係する)40歳代では、筋肉に傷がついたり、脂肪が蓄積したりすることが多く、60歳代では間違いなくサルコペニア(筋肉減少)に襲われる」とし、両年齢層で組織をつなぎとめるタンパク質に変化が見られ、これが皮膚、筋肉、心血管系の変化を説明するのに役立つだろうと述べる(CNN)。
今回、40代半ばで多くの変化が起こることがわかり科学者を驚かせた。最初は更年期か閉経が大きな変化を引き起こしていると考え、研究グループを男女別に分けたが、40代半ばの男性にも変化が起こっていることがわかった。
シェン氏は「40代半ばの女性で観察される変化には更年期や閉経期が関与している可能性がある一方で、男女ともにこのような変化に影響を及ぼす、より重大な要因が存在する可能性が高い。これらの要因を特定し研究することが、今後の研究の優先課題になる」と述べる。
◆40代と60代はライフスタイルの見直しを
こうした変化の一部は、生物学的要因によるものではなく、これらの年齢層に見られるライフスタイルや行動的要因に関連している可能性があるとスナイダー氏は言う。たとえば、アルコール代謝の機能障害は、ストレスの多い40代半ばにアルコール摂取量が増加することによって生じる可能性がある。
研究チームはこうした分子レベルの変化のクラスターが起きる要因について調査する予定だ。その原因が何であれ、変化のクラスターが存在することから、特に40代と60代の健康には注意を払う必要性があると研究者は述べ、40代と60代で運動を増やし、40代で飲酒量を減らすなど、ライフスタイルを変えることを勧めている。
スナイダー氏は、60代に近づいたら、炭水化物の摂取量に注意し、腎臓の機能を助けるために水をたくさん飲むようアドバイスしている(CNN)。