米最高裁「路上生活者への処罰、違憲ではない」 自治体による取り締まり容認
アメリカ連邦最高裁判所は6月28日、ホームレスの人が路上で寝る権利があるかどうかの審議に関して、ホームレスの人に対する処罰は憲法に違反しないとの判決を下した。
◆覆された下級裁判所の判断
「グランツ・パス市対ジョンソン(City of Grants Pass v. Johnson)」裁判は、オレゴン州グランツ・パス市のホームレスの人々が同市に対して起こした集団訴訟で、原告側は、同市の公共の場での野宿を禁ずる条例(違反者には罰金や、最大30日の禁錮刑が科される)が憲法修正第8条に違反すると訴えた。この条項は、残酷で異常な刑罰を禁止するもので、「過度の保釈を要求したり、過度の罰金を科したり、残酷で異常な刑罰を科したりしてはならない」と記載されている。
審議の結果、グランツ・パス市の条例は、「憲法修正第8条が禁止する残酷で異常な刑罰」には当たらないという判断が下された。憲法修正第8条は、政府が有罪判決後にどのような「方法や種類の刑罰」を科すことができるかという問題に焦点を当てており、そもそも特定の行為を犯罪として取り締まることができるかというところは焦点ではないという説明だ。判決は6対3。保守派の判事6人全員が合憲と判断した。
2018年のマーティン対ボイジー裁判では、第9巡回区控訴裁判所は、管轄区域内のホームレスの人の数が「実質的に利用可能な」シェルターのベッド数を超える場合、市がホームレスの人に対して野宿を禁止するような条例を施行することは修正第8条の条項により禁じられていると判断。この判決の後、グランツ・パスのような西部の都市に対する訴訟が急増したということが、今回の判決書に記載されている。
グランツ・パス市の人口は約3万8000人で、そのうち約600人がホームレスの状態に置かれている。原告側はマーティン対ボイジーの判決を持ち出し、グランツ・パスのホームレスの人の数は、「実質的に利用可能な」シェルターのベッド数を超えていると主張した。またグランツ・パスの慈善団体が運営するシェルターは、禁煙や礼拝への参加を義務付けるなどの規則があり、「利用可能」とは言えないと訴えた。
◆司法の判断では解決できないホームレス問題
全米で約65万人以上がホームレス状態にあり、そのうちの40%が路上、車、公園、駅などで寝泊まりしているという。今回の判決を受け、行政がホームレスの人々に対する規制をさらに強化するという動きが考えられる。一方で、まずはシェルターのベッド数を増やすなどの対策を取るべきだという声もある。
判決書では「ホームレスは複雑で、その原因は多岐にわたると同時に、ホームレス対策に取り組む行政の施策も複雑である」との言及がなされ、連邦裁判事がホームレスに関する政策の決定権限を持つものではないとした。この裁判は、あくまで憲法修正第8条に関連した判決でしかないという点が強調された。
今回の最高裁判決によりホームレスの人々の生活はより苦しいものになるリスクがある。行政による処罰がより強化され、前科ができてしまうことで、住宅への入居が難しくなるなど、ますます行き場の選択肢が絞られてしまうことが懸念される。