毎日100万人が性病に感染 梅毒が急増 WHO報告
日本だけでなく、世界的に性感染症が急増している。世界保健機関(WHO)が先日発表した報告書によると、梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4種類の性感染症に、世界で毎日約100万人が新たに感染している。抗生物質に耐性を持つ、つまり治療薬の効かない淋菌も増加しているという。
◆15歳以上への性病感染 依然増加
WHOが21日に発表した最新の報告書によると、梅毒などの性感染症(STI)が世界のほとんどの地域で増加傾向にある。
報告書によると、世界中で毎日、100万人以上の15歳から49歳の人々が梅毒、淋病、クラミジア、トリコモナスの4つの感染症に新規感染している。なかでも、梅毒の新規感染症例が急増している。
この年齢層における梅毒の新規感染者は2022年に800万人に到達(20年から90万人増加)、梅毒関連の死亡者数は23万人に上った。最も増加したのは、南北アメリカとアフリカだった。
アメリカにおける感染状況は、世界的な傾向を映し出していると指摘される。アメリカ疾病対策センター(CDC)が今年初めに発表した報告書によると、2021年から2022年にかけて梅毒の総感染者数は17%以上増加し、20万7255人に到達。1950年以来最大の感染者数を記録した。
欧州疾病対策センター(ECDC)が3月に発表した最新の年次データ報告によると、2022年に欧州で性感染症が急増し、淋病感染者は前年比48%増、梅毒感染者は34%増、クラミジア感染者は16%増となった。こうした状況を受け、一部の国はすでに対策を導入している。
◆進む淋菌の多剤耐性化
報告書では、抗生物質への耐性を持つ淋菌の増加も報告されている。2023年の時点で、淋菌の抗菌薬耐性サーベイランスが強化された87ヶ国のうち、9ヶ国が「治療の最終ライン」とされるセフトリアキソンに対する耐性レベルの上昇(5%から40%)を報告している。
WHOはこの状況を監視しており、感染拡大を抑えるために推奨治療法を更新している。
◆肝炎とHIV感染による死亡者数増加
2022年のHIVとウイルス性肝炎の新規感染者数は、微減にとどまった。B型肝炎およびC型肝炎の新規感染者数は、それぞれ約120万人、約100万人に達した。ウイルス性肝炎による推定死亡者数は、効果的な予防、診断、治療ツールにもかかわらず、2019年の110万人から2022年には130万人に増加している。
HIVの新規感染者数も、2020年の150万人から2022年の130万人に微減した。HIV関連死は依然として多く、2022年には63万人が死亡し、そのうち13%は15歳未満の子供が占めた。
HIV、ウイルス性肝炎、性感染症による死者は合わせて約250万人に上る。HIVとウイルス性肝炎の新規感染が十分に減らないなか性感染症が増加しており、持続可能な開発目標(SDGs)の保健衛生目標の達成を脅かしているとWHOは警告する。
WHOのテドロス・アダノム事務局長は報告書において、「公衆衛生の脅威となる伝染病を2030年までに終結させる手段はある。(中略)各国は各自の目標に向けてできる限りのことをしなければならない」との見解を示した。