海外は日本の「空き家」に興味も… 全国900万戸、問題深刻化
政府の統計で、日本の空き家件数が過去最高となった。人口密集地から外れた場所だけでなく、都市部にも空き家が増加しており、少子高齢化や制度上の問題など、日本独特の要因が海外から指摘されている。
◆過去最多を記録 増え続ける空き家
総務省の発表によれば、2023年10月時点で、日本の空き家数は900万戸で過去最多となった。2018年と比較し、51万戸の増加で、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)も13.8%と過去最高になっている。
英ガーディアン紙は規模感を説明するため、1戸あたり3人住むと仮定した場合、900万戸はオーストラリアの全人口を収容するのに十分な数だと述べている。米CNNは、900万戸あれば、ニューヨーク市民全員に1軒ずつ与えても、まだ余るとしている。
空き家のうち443万戸が賃貸可能だが、長期にわたり空き家になっているという。ほとんどが、人口が多い地域から離れており、380万戸以上の状況は不明で、900万戸のうち売りに出されているのはたった33万戸しかない。もっとも、都市部も無縁ではなく、数十万戸の長期空き家がある。
◆人口減少、過疎化が影響 税制も問題
空き家問題の根底には、人口減少と地方の過疎化といった問題があると指摘されている。日本では家は代々受け継がれることが多いが、出生率が急落しているため、その多くには相続人がいない。また、次の世代が相続しても、都市部に移り住んでおり、地方に戻る価値をほとんど見出していない場合もあると専門家は説明している。(CNN)
制度上の問題も空き家が増える一因だ。ガーディアン紙は、日本では更地には建物のある土地よりも高い固定資産税が課せられる点を指摘。古家を取り壊す際の経済的負担に加え、更地にすることで土地の税負担の軽減措置がなくなるため、不動産の相続を避ける人もいると説明している。所有者のなかには、税制上、再開発のために家を取り壊すより、残したほうが安上がりだと考える人もいると述べている。
さらに、全国には記録管理が不十分なため、所有者がわからず放置されている家もある。香港のサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)は、持ち主不明の空き家はよくあることだという不動産業者の言葉を紹介。書類仕事に熱心な日本でそんなことがあるのかと困惑するが、現在の制度では、相続の際にだれも家を受け継がなかった場合、持ち主を把握することが困難になると説明している。
空き家の増加は、老朽化した町を若返らせようとする試みを阻害し、メンテナンス不足から潜在的な危険となっている。また、自然災害の多い日本では、災害時の救助活動のリスクが高まることも指摘されている。(CNN)
◆興味を示すのは外国人だけ? 新たな制度の必要性も
買い手の見つかりにくい空き家だが、CNNによれば、近年外国人などが安く買い取り、おしゃれなゲストハウスやカフェに改装する様子を見せる動画がトレンドになっているという。ガーディアン紙によれば、田舎の古民家に対する外国人の関心も高まっており、別荘や賃貸用の選択肢として注目されているという。
ただ、ほとんどの家屋は外国人には販売されないだろうし、日本語ができない人にとっては、事務的な作業やその背後にあるルールなどが購入の障害になると、神田外語大学のジェフリー・ホール氏は見ている(CNN)。
SCMPは、小規模の投資家が数件のアパートを賃貸する「バイ・トゥ・レット」というイギリスのモデルを紹介する。日本では賃貸市場や開発市場は圧倒的に大企業が支配していると述べており、空き家問題の解決には、新たなメカニズムが必要だという見方を示している。