米大学デモ取材、学生記者が活躍 危険のなか、生の声を拾う
アメリカの大学各地で発生した、親パレスチナ・反イスラエルのデモ抗議。大学内への一般メディアのアクセスが制限されたため、その報道に学生ジャーナリストが活躍した。
◆米大学各地で発生したデモ抗議
ハマスとイスラエルの戦争が始まった10月7日以降、アメリカ各地の大学キャンパス内において親パレスチナ・反イスラエルの抗議デモが見られるようになり、昨年12月にハーバードやMITなど主要大学の学長らによる、大学での反ユダヤ主義に関する議会答弁での発言が物議を醸し、抗議の声がピークを迎えた。
今年になってからは、言論の自由よりも反ユダヤ主義との戦いに注力するとしたコロンビア大学の学長の証言をきっかけに、4月にデモ抗議の活動が再度活発化。コロンビア大学の学生が敷地内に50以上のテントを張り、敷地内に居座った。それに対し、大学側は警察を呼んで対応。学生は強制的に退去させられ、なかにはけがを負った人もいたようだ。基本的には非暴力であったデモだが、大学という自由な学びの場において、国家権力の象徴である警察が動員されたこともあり、事態は複雑化。デモ抗議活動は、全米および一部の海外大学にまで波及し、アメリカでは少なくとも2800人が大学キャンパス内において逮捕された。
その後、大学側と学生側でも協議のうえ、和解に至ったケースもあるが、卒業式シーズンの5月に予定されていた卒業式関連のイベントをキャンセルするなどという対応も発表され、現在もキャンパスの平安は取り戻されてはいない。
◆学生ジャーナリストの活躍
アメリカの主要大学のキャンパス内でデモ抗議が過熱化するなか、一般の報道関係者の構内への出入りが制限されたため、デモの報道にあたっては、コロンビア大学、ノースイースターン大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)など各大学の新聞記者として活動する学生ジャーナリストたちが活躍。彼らのなかにはデモ参加者から攻撃されたり、警察に逮捕されたりした人もいたようだが、そうしたリスクを持ちながらも学生目線を理解する記者として取材を続け、学生たちの声を拾い続けた。取材や編集のプロフェッショナリズムをリアルタイムで学べる貴重な経験にもなったようだ。
学生記者の役割を鑑み、コロンビア大学内にあるピューリッツァー賞の事務局は身の危険や学業のリスクに直面しながら、働き続けたことを高く評価した。また、テキサス大学オースティン校の学生新聞、デイリー・テキサンは、学生記者だから手に入れることができる内容や視点があるとコメントしている。今回のイベントは、過去のベトナム戦争反対を訴えるデモや、南アフリカのアパルトヘイトに対抗するための投資反対を訴える学生運動を想起させるものだとアクシオスは伝える。だからこそ、学生記者の発信が重要な役割と果たした。
事態が完全に収束していないなか、引き続き、学生記者の報道に注目したい。