パリ、SUVの駐車料金を3倍に 1時間2900円にも
◆大きく重い車にペナルティ
新施策の対象となる車両は、1.6トンを超えるガソリン車またはハイブリッド車と、2トンを超える電気自動車だ。レ・ゼコー紙の調べによれば、イル・ド・フランス(パリとパリ郊外)で登録された車両の約16%がこれにあたる。数でいえば、イル・ド・フランスには90万台、パリ市内に限っても12万9000台という計算だ。(ル・フィガロ紙、2/5)
パリ市は、この案を出した理由を、公共スペースを車に独占させず、歩行者の安全を守り、大気汚染を減らすためとしている。過去30年足らずで、フランスの車の平均重量は975キロから1233キロへと、250キロ以上も増えたという。車が大きくなれば、路上駐車が基本のフランスでは、歩道を含む公共のスペースが車に占領されて狭くなるというのがパリ市の言い分だ。
◆パリ市長の環境政策
2014年からパリ市長を務めるアンヌ・イダルゴ氏は、環境政策に非常に熱心で、サイクリングロードや歩行者専用道を急速に市内に設けたことは、海外でも話題になった。だが、その一方で支持率は決して高くない。2022年の大統領選では、社会党にとって過去最低の得票率1.7%を記録した。
同じ陣営内でもイダルゴ市長の策は満場一致で支持されることが少ない。革新的に見える案を打ち出しても、それを実現するための具体的な対策に欠けるからだ。上述のサイクリングロード敷設では、サイクリングロードを敷くため多くの車道を削ったにもかかわらず、パリ市内に入る車の流れについては制限も検討もしなかったことが挙げられる。結果、市内各所で渋滞が発生する事態となったと指摘されている。(筆者自身もパリを通るたび、カオスともいうべき交通状況に出くわしている)
そのため、イダルゴ市長は「エコロジストの独裁」だと揶揄(やゆ)されたり、グリーンウォッシングのチャンピオンだと批判されることもある。