アフガニスタン、覚醒剤生産が急増 国連薬物機関調査

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 アフガニスタンは覚醒剤のメタンフェタミン(メス)の生産で著しい成長をみせていることが、9月10日に発表された国連薬物犯罪事務所(UNODC)の報告書で明らかになった。2021年8月に政権復帰したイスラム主義組織タリバンが麻薬撲滅を宣言したにもかかわらず、同国はアヘンの主要生産国、ヘロインの供給元でもある。

 報告書を発表したUNODCによると、アフガンのメスの多くは合法的に入手可能な物質から生産されるか、自然生育するエフェドラ植物から抽出されたものだという。

 アフガンでのメス生産により合成麻薬市場が混乱し、中毒を助長する可能性があるため、国内と地域の健康と安全に対する脅威が高まっていると報告書は指摘する。また、EUや東アフリカからはアフガン由来とみられるメスが押収されたという報告がもたらされている。

 国内で押収されたメスの量は19年の100キロ未満から21年には約2700キロに増加しており、アフガンでの増産が示唆されていると報告書は指摘する。だがデータが存在しないため同国におけるメスの供給量、生産量、使用量は明らかにされていない。

 UNODCの調査・傾向分析部門チーフ、アンジェラ・ミー氏によると、特にアフガンでのメス生産について言えば、ヘロインやコカインと比べていくつかの利点があるという。同氏は「何かが成長するのを待つ必要もないし、土地も要らない。ただ生産する人とノウハウがあればいい。メスの生産施設は移設可能なので表に出てこない。アフガンには、世界最大のメス生産国であるミャンマーとメキシコではお目にかかれないエフェドラもある。この国では合法の植物で、至るところで生育している。だが大量に必要だ」と話している。

 ミー氏は、タリバンによる麻薬取り締まりがメスの供給に与えた影響について評価を下すのは時期尚早だとしている。

 アフガニスタン内務省のアブドゥル・マティーン・カニ報道官は「タリバン政権はあらゆる危険ドラッグと麻薬の国内での栽培、生産、販売、使用を禁止した」と述べている。

 当局は644ヶ所の生産施設のほか、禁止麻薬が栽培、加工、生産されていた約1万2000エーカーの土地を破壊し、5000回以上の捜索で6000人を逮捕した。

 カニ氏は「闇活動もあるため、早期撲滅は不可能だ。だが我々は、麻薬全般、特にメスの撲滅を目指す4ヶ年の戦略計画を策定した」と話している。

 昨年11月に発表された国連の報告書には、タリバンによる政権奪還以降、アヘンの栽培量は前年比32%増加しており、当局が22年4月に栽培禁止を発表した後、アヘン価格が上昇したと報告されている。アヘン販売により農家収入は21年の4億2500万ドルから22年には14億ドルと3倍に増加した。

 同報告書では、アフガン経済が急減速したことで違法薬物市場がはびこり、人々は生きるために違法栽培や密売に手を染めるようになったと指摘している。

 アフガンでは干ばつや深刻な不況のほか、数十年にわたる内戦と自然災害によってもたらされた継続的な被害に直面している。かつて欧米からの支援を受けていた頃に経済の支えとなっていた国際金融の機能が停止したこともあり、経済環境の悪化で人々は貧困と飢餓、麻薬中毒へと追い込まれつつある。

 メディアにコメントする立場にないとして匿名を条件に語ってくれた同国保健当局の担当者によると、病院には約2万人の薬物中毒患者がおり、大半がメスによるものだという。このうち女性は350人で、子供も治療を受けているが、その人数や年齢については明らかにしなかった。

By RIAZAT BUTT Associated Press
Translated by Conyac

Text by AP