ウクライナ、クリスマス祝日を12月25日に変更 ロシアの押し付けた伝統を非難

Felipe Dana / AP Photo

 ウクライナのゼレンスキー大統領は7月28日、同国のクリスマス祝日をロシア正教会が定める1月7日から12月25日に変更する法案に署名した。

 この法案に添付された注釈書には、1月7日を「クリスマスの祝日とすること」といった「ロシアからの遺産を断ち切る」ことが目標として掲げられている。さらに、ウクライナ人の「アイデンティティを求める不断の闘いとその成果」、そして1年2ヶ月に及ぶロシアからの攻撃により駆り立てられた「自国の祝日や伝統のなかで日々を暮らしたいというすべてのウクライナ人の願い」が列記された。

 一部のウクライナ人の間では、ロシアやその文化、宗教、伝統からの決別を表明し、2022年にはすでに12月25日をクリスマスとする動きがあった。

 この法律により、ほかにも「ウクライナ国家性の日」が7月28日から7月15日、「ウクライナ防衛者の日」が10月14日から10月1日に変更された。

 ウクライナ国内の正教会の主権を主張するロシア正教会とその他の東方正教会では、旧暦のユリウス暦を継続して使用している。この暦上でのクリスマスは、多くの教会や非宗教的な団体が使用するグレゴリオ暦よりも13日遅く、1月7日である。

 近代的かつ天文学的に正確性の高いグレゴリオ暦がカトリック教会に導入されたのは16世紀になってからのことだ。それ以降、プロテスタントと一部の正教会は、クリスマスとイースターの日を決定する目的で独自の暦を調整してきた。

 宗教をめぐるウクライナ国内の状況は長年にわたって分裂状態にある。国内には、ロシア正教会に系統付けられつつも広範な自治権を有する正教会と、そこから完全に独立した正教会の2つが併存している。2023年初め、ロシア正教会から独立した組織を成すウクライナ正教会は、12月25日をクリスマスとする修正ユリウス暦を起用する決定を発表した。この方針を受け、信者らは12月25日に祝日を祝うことができるようになった。

 一方で、対立関係にありロシア正教会と系統を同じくする正教会が継続して1月7日にクリスマスを祝うと公約したことが、ロシアの国営通信社「RIAノーボスチ」によって7月29日に報じられた。

 同日、ロシアのプーチン大統領は暦の変更について「数世紀にわたって繰り広げられてきたことを体現するものであり、カトリック教会と正教会の関係性に関わることだ」と記者に話した。

 ゼレンスキー氏は7月29日にウクライナ東部のドネツク州を訪れ、特殊作戦部隊と面会した。ロシアにより不法に併合され、一部が占領下に置かれている同地域では、激しい戦闘が続いている。同氏は配信動画を通じて声明を発表し、29日は兵士たちの功績を評価する正式な日になること、そして、ロシアが実効支配するオレニフカの収容所が破滅的な攻撃を受け、捕虜数十人が殺害された日から1年を迎えることに触れた。

 この攻撃をめぐってロシアとウクライナは、残虐行為を隠ぺいするための計画的な行為であったと互いを非難し合った。双方からの要請を受けた国連は、殺害を調査するための事実調査団を現地に派遣したものの、安全上の懸念から2023年1月に解散している。

 7月29日に配信された動画のなかでこの攻撃に言及したゼレンスキー氏は、ロシアによる「極めて卑劣で残酷な犯罪」の一つであると言い表した。また、メッセージアプリのテレグラムに配信された別の声明のなかでは、ドネツク州の兵士らの功労により「我々の土地と国民のすべてが占拠者から解放される日が近づいている」と述べ、同地域のスタロマイオルスケ村を奪還した特殊作戦部隊の最近の功績を強調した。

 西欧諸国とロシア当局が、ウクライナ南東部では反転攻勢を試みるウクライナ軍による攻撃が激化していると報じたわずか数日後に、ゼレンスキー氏は東部地域を訪問している。

 7月29日、プーチン氏は前線でのウクライナによる攻撃の激しさは「鈍化している」と述べた。同時に、ロシア軍はすべての攻撃をうまくかわしており、むしろ、戦線上のいくつかの拠点における同国軍の反撃は勢いを増すばかりであると何度も繰り返し伝えた。

By FELIPE DANA and DASHA LITVINOVA Associated Press
Translated by Mana Ishizuki

Text by AP