イラン謎の毒ガス攻撃の背後には? 政府の「復讐」を疑う声も

イランのライシ大統領(1月22日)|Vahid Salemi / AP Photo

◆政府の関与を疑う声
 だがこれとは逆に、政府こそがこのガス攻撃を助長したと見る保護者も少なくない。マーサ・アミニの死以来、積極的に政府への抗議運動を行ってきた女生徒たちへの「復讐」だという考えだ(ル・モンド紙、3/6)。

 実際、3ヶ月以上も頻発するガス事件を放置しておきながら、最初のガス事件を公にしたジャーナリストを逮捕(英ロンドンのペルシャ語放送局イラン・インターナショナル)。ガス被害に遭った時の動画を公開した女生徒も逮捕したとされる。

 また、5日に教育省の建物の前でガス事件に抗議する声を上げた保護者らが治安部隊に乱暴に拘束されるなど、当局の振る舞いには釈然としないものが多い。

 イランに詳しいル・ポワン誌の特派員は仏放送局LCIの番組で「これらの攻撃の背後には、シーア派のイスラム過激派グループがいる可能性がある」と口にしている。ル・モンド紙記者も、首謀でないにしても、イラン当局はこのガス攻撃に「賛成し、黙認している」と明言する(ル・モンド紙、3/6)。

 ガス攻撃はこれまでは小学校から大学までの主に女子校で発生してきたが、3月7日にはテヘランの複数の地下鉄の駅でも異臭騒ぎが起きた(ル・ポワン誌記者ツイート、3/7)。当局としてはこの辺で収束宣言と行きたいのだろう。だが、事件が収束しても国民の信用回復には到底つながらないであろう。

Text by 冠ゆき